朝方。

薄暗い部屋で目を覚ますと、彼はもう隣にはいなかった。


最後の記憶は、辛そうに顔を歪めた彼の謝罪。

ごめん。

それだけ呟き、優しく落とされたキスに目を閉じた。


あれは、一体何に対する謝罪だったんだろう。

この半日で起きたたくさんの出来事を振り返りながら、ゆっくりとだるい体を起こした。


結局、ちゃんと話も出来ていない。

宝城の関係者に身元がバレているとなれば、彼はそれに勘付いた時点でここを出て行くはずだ。

それが今日なのか、明日なのかは分からないが、間違いなく、また会えなくなる日は近いだろう。


「………ぃ、っ、」

せめてもの優しさなのか。

きちんと血が拭われ、湿布が貼られた頬に触れながら声を漏らした。


どんなに辛いことがあっても、こうして朝はやってくる。

無情にも昇る朝日に目を細めながら、放置していたスマホを手に取った。


「———もしもし」

見つめた先には、昨夜あの男から貰った名刺。

「苗字名前です」
「昨日の話……協力します」

大好きな彼は、もういない。

「黒崎の、何を知りたいですか」

机に置かれた、彼の行き先と思われるメモをくしゃりと握り潰した。