じゃあな。
ばいばい。
そう言って、目的も告げずにいなくなってしまった二人のことを、今でもたまに思い出す。
わたしが今まで見てきた中で、一番不器用で、一番互いを思い合っていた二人。
最後は、幸せそうに手を繋いで去って行ったその背中が、それ以降振り向くことはなかった。
「はい。吉川です。……はい」
あれから6年。
わたしの前から姿を消した二人は、今、どうしているだろう。
あの頃の夢を叶え、無事検事になった自分は、今でも法律が人を救うということを信じている。
もちろん、それをあの二人に伝える術は無いし、あえて伝えようとも思わない。
しかし、もしいつかどこかで、またあの二人に会うことが出来たら———。
たまに考える。
そんなこと、叶うはずもないのに。
最後に二人と別れたあの日の空を思い出し、グッと肩に掛けていた鞄を抱え直した時だった。
「———こら!危ないから信号はママと手繋いで!」
「、?」
「あ!すみませんっ、!」
今でも、たまに思い出す。
幸せそうに、二人で手を繋ぎながら去って行ったあの背中。
ピンの伸びた背筋に、ふわりと揺れる綺麗な髪。
相変わらず、とても可愛らしい顔で笑う彼女の手は、見覚えのない小さな男の子と繋がれていた。
「もう、ほらちゃんと手繋いで?」
「ん!」
「よし、良い子」
遠くからでも、よく分かる。
ニコリと笑って、彼女が指差した先。
その手を引いて走り出した男の子が、嬉しそうに向かった先には、優しく笑う彼がいた。
あの頃。名前さんにしか向けられなかったその優しい笑顔で、走り寄ってきた男の子を抱き上げる姿に、なんだか無性に泣きなくなった。
二人は、今もずっと一緒にいる。
あれから、ちゃんと幸せになれたんだと、心の底からホッとした。
『もしもこの先誰かと一緒に過ごす未来があるなら、俺が一緒に生きたいと願うのは………やっぱり、苗字名前だから』
『コイツだけは……一生離したくない』
「良かったね、黒崎……」
どうか、これから先も、ずっとお幸せに。
あの日と同じく、仲良く寄り添いながら歩いて行く二人の間には、マタニティマークの入ったキーホルダーが揺れていた。
「高志郎くん、なに笑ってるの?」
「ん?なんでもないよ」