「お疲れ様です。今日はよろしくお願いします」


音楽番組の本番前。

楽屋でくつろいでいると、
本日ゲスト出演するらしい俳優さんが挨拶に来た。

以前〇〇とドラマで共演していたこの人は、
自身が主演を務める映画の主題歌が披露される為、
そのアーティストさんの応援に来たと聞いている。


「あれ、〇〇ちゃんはいないんですね」

………もう一度言う。

彼は、主演映画の宣伝に来ている。

そして、そこに〇〇は関係無い。






神「すみません。〇〇は今外してて」
「そうなんですね。すぐに戻られます?」
神「いや〜……」

実際は、ただのトイレなのですぐに帰って来る。

しかし、俺達としては嫌というほど経験しているこの感じ。


絶対に、彼を〇〇に会わせてはいけない。

直感で、メンバー全員の気持ちが一致したことを感じた。



廉「俺もちょお出るわ」
海「俺も〜」

廉「わざわざありがとうございます。失礼します」
海「本番はよろしくお願いします!」

「あ、はい」







多分、廉と海人は〇〇の足止めをしようとしている。

まじでナイスプレー。

心の中で二人に拍手しながら、
ちゃっかり居座るこの人をどう帰そうか。
悩む間もなく、ガチャッと開いた扉の音に驚いた。


『ただいま〜……あれ、××くんだ』
「〇〇ちゃん!」

『そっか。今日主題歌あるんだっけ?』
「そうそう。宣伝で来た」
『お疲れ様』
「ありがとう。〇〇ちゃんも頑張ってね」
『うん。ありがとう』


どうやら一歩遅かったらしい。

俺達の楽屋なのに、既に俺達のことは眼中に無いのか。

ひたすら〇〇に話しかけ、
楽しそうに笑っている男にイライラした。












神「ねぇ、あれ絶対うちの子狙っとるよね」
紫「でしょうね」
神「じんくんジェラシー」
紫「その顔やめて」
神「ぴえん」
紫「腹立つな、笑」

小声で話しながらも、
視線はしっかり〇〇の方を見ているから分かる。

適度なボディタッチって、男からもあんなにあるもんなんだな。


神「うぜー」
紫「………」
神「って顔に書いてあるし俺も同じ気持ちよ」

下手に口を挟んで〇〇の迷惑になってもいけない。

かと言って、このなんとも言えないモヤモヤを抱えたまま
〇〇を独り占めされるのも嫌だな、と黙り込んでいた時だった。












「今回の曲ってダンスナンバーなんでしょ?また泣いてない?」




 ………は?


『あ、はは……そう毎回は無いですよ』
「そっか〜。なら良かった」

突然の言葉に、メンバー全員が驚いているのを感じた。

普段、俺達の前でも滅多に泣かない〇〇が、
知らない場所でそこまで切羽詰まっていた事実。

いくら過去の事とは言え、気付けなかったことが悔しくて———。


けれど、それ以上に
彼女にとってきっと隠しておきたかったであろうその事実を、
こんなにも簡単に明かしてしまう男に腹が立った。











岸「すみません。俺達この後打ち合わせあるんで、もういいっすか?」

声を上げたのは岸くんだけだったけど、多分、全員怒っていた。

黙って男のことを睨み付ける廉も。

珍しく険しい顔をして黙り込む海人も。

普段は誰より感情のコントロールが上手な神宮寺でさえ、
一切笑っていなかった。




『あの……』

神「大丈夫。〇〇には怒ってないから」
紫「悔しくてちょっと妬いただけだよ」

半分嘘で、半分ほんと。

外で爆発するくらいなら、
ちゃんと俺達の前で弱音を吐いてほしかった。









男がいなくなった楽屋で、
気まずそうに俺達の様子を伺う〇〇に岸くんが歩み寄った。

岸「〇〇」
『………』

岸「ふっ、なんて顔してんだよ」
『だって、』
岸「言ったろ?怒ってねーから」

もはや泣きそうな〇〇の頭に手を置き、
優しく笑う岸くんは、俺から見てもカッコ良かった。


『うっ……うぅ〜〜っ、あいつー…っ』
岸「ははっ、ムカついたか」
『ほんっと腹立った、……こっちだって、
泣きたくて泣いたわけじゃないのに、』
岸「うん」
『ていうか、あの人の前で泣いたわけじゃないもん、』
岸「そっかそっか」
『うぅ〜〜っ……悔しい〜っ!』







岸くんの胸に顔を埋め、
小さく喚く〇〇に全員で笑った。

神「も〜!〇〇たん泣かないのー」
『泣いてない!』
海「あははっ、俺も〜!」
紫「じゃあ俺もいこっかな」

廉「………」
神「廉!」
海「廉もくるの!」
廉「……分かったって、」

岸くんに抱き着く〇〇にジンが抱き付き、その横から海人
次に俺が後ろから抱き付き、最後に廉が加わった。

神「はい。みんなでぎゅ〜!」
海「ぎゅ〜っ!」

『うぅっ……やめてよも〜っ……泣くぅ、っ』

紫「ふはっ、泣け泣け」
神「俺達しか見てないから」










たまには、こんな日があったっていいと思う。


生放送を前にぐずぐずな〇〇のメンタルは心配だったけど
本番ではちゃんと笑顔を見せてくれて安心した。


紫「じゃ、今日は岸くんの奢りってことで」
神「まじ!?やったー!」
岸「いや言ってねぇって!」
海「岸くん俺肉食いてー」
岸「だから奢んねぇって!」

廉「行け〇〇」

『……岸くん』
岸「………」
『岸くぅん……』

岸「お前ら〇〇使うのはズリィぞ、」
紫「ふはっ、ちょっろ」