『……………ん、』
「あ……名前?」
『………ぅ…ん、?』
「おーい、分かるー?」

真っ白な背景に、ヒラヒラと動く何か。

ぼんやりと焦点が定まらない視界に、そのまま人の顔のようなものが写って、ようやく、そこにいるのが誰なのか理解出来た。

『………しょ、くん、?』
「うん、当たり。紫耀だよ」

段々とハッキリするその顔が笑っていることに気付いて、なんだか凄くホッとした。


「大丈夫?どっか痛いところは?」
『ううん。そんなことより、何で紫耀くんがここに……』
「神宮寺さんに教えてもらった。学校にも来てないし、急に仕事休むから心配になって」
『ごめん……』
「名前が謝ることじゃないでしょ。大変だったね、事故で閉じ込められるとか初めて聞いたわ」
『あ……うん』

そういう事になっているのか。

正直、こうなる前のことはよく覚えていないが、犯人が愛莉であることだけは確かだったので、安心した。

きっと、誰かが手を回してくれたのだろう。
脳裏に浮かぶ有能な執事の顔を思い浮かべながら、だるい体をゆっくりと起こした。


『今日って……』
「まだ一日しか経ってないよ。昨日のことは、あんまり覚えてない?」

うなずくと、そっか、と呟いた紫耀くんが、視線をわたしの少し先に向けた。

「名前のこと、助けてくれたのは神楽木晴だよ」
『え……』
「俺が来るまで、ずっとここにいた」

そう言って、指差された先にあったのは、晴の上着。

「名前さ、よくあの神楽木晴のことで悩んでたけど、ほんとに好かれてないの?」
『え……』

言われて、意図が分からず黙り込むわたしに、紫耀くんは、しばらくしてから、なんでもない、と口を噤んだ。