『晴……』
「……」
『晴、』
「……」
『ねぇ晴ってば、!』
「!」


しばらく歩いて、辿り着いたのはVIPルームの一角。

人の気配が消え、自分達以外には誰もいないことを確認してから、わたしの手を引く晴の腕を振り払った。


「っわ、悪い……!俺、」
『大丈夫。話ってなに』


今さら、何を言われるんだろう。

険しい顔で、ジッとこちらを見つめる晴に少しだけ緊張していると、晴は、気まずそうに視線を彷徨わせながら呟いた。


「昨日の……あの、色々あったことだけどよ、」
『うん』
「俺は、例えお前が誰のことを好きでも………ずっと、最高の幼なじみで、仲間だと思ってるから」
『え………』
「お前は、多分もう俺のことなんか全然好きじゃなくて………つーか、むしろもう顔も見たくねーくらい嫌いだと思うけどよ、……それでも、俺はずっとお前のことが好きだから」


そう言って、寂しげに眉を寄せる晴の言葉に、何を返せば良いのかわからなかった。


鈍感も、ここまでくると笑ってしまう。


本当に、なんてずるい人なんだろう。


『…………嫌いじゃないよ』
「ぇ……」
『嫌いなんか、なれないよ、』


わたしだって、晴と同じ。

例えあなたが誰を好きでも、あなたのことが大好きだから。


『ごめんね、酷いこと言って、』
「バカ、お前が謝んな。あれは俺が悪かったんだ」
『うん、でも……』
「まぁ、さすがにだいぶきたけどな。名前からの大嫌いは立ち直れないかと思ったぜ」
『本当にごめん、』
「だからもう謝んなって!俺も酷いこと言ったんだし、これでおあいこだろ」

な?と、嬉しそうに笑って差し出された手は、きっと仲直りの証だろう。

この手を握って、晴と幼なじみとしての関係を取り戻して、それで、その後は?


「………名前?」
『ごめん。わたしまだちょっとボーッとするから、先に愛莉のところ戻るね』
「は?なら早く言えよ。俺も一緒に、」
『大丈夫。一人で行けるから』
「おい、」


さすがにわざとらしかったかな。

心配そうに、わたしの名前を呼んでくれる晴の声を聞きながら、イベントホールまでの道を引き返した。