「じゃあ、ほんとにでっかいのが飛んできただけ?」
『うん。すっごい大きかったの。しかもこっちに飛んでくるからビックリしちゃって、』
「……まぁ、そういうことにしといてあげる」
突然のことに、思わず呟いてしまった助けてという一言。
その言葉に、酷く焦った様子で大丈夫なの!?と声を荒げる紫耀くんに、苦し紛れの嘘を吐いた。
紫耀くんには、きっとこれが嘘であることなんてバレているだろうが、それでも、細かいことまで詮索してこない優しさが嬉しかった。
まだアイツと話してんのか。
どこにいる。
紫耀くんと話しながらも、次々に届くメッセージに気付かないフリをしながら、赤く色付く首筋の跡を引っ掻いた。
どうしても晴には会いたくない。
だから、連絡も全て無視し、家でも居留守を使った。
「名前」
『………』
「おい名前」
『………』
「シカトすんな!」
『……っ』
2日。
結局、晴を避け、顔を合わせずに済んだのは、休日の間だけだった。
「名前、5分でいい。時間をくれ」
『………』
「話すだけでいい。話したら、ちゃんと帰るから」
『………分かった』
「なら、」
『今ここで話して。はいスタート』
「なっ……おま、」
場所は、学園近くの大通り。
人の往来も盛んなこの場で、既に少し目立っているわたし達が、落ち着いて話なんて出来るはずもないのは分かっていた。
「なぁ名前、頼むから。ちゃんと話を聞いてくれ」
『だから、聞くって言ってるでしょ』
「そうじゃなくて!こんな……投げやりにじゃなくて、ちゃんと謝りたいんだよ」
謝るって、一体何に対しての謝罪なんだろう。
『…………晴は、誰が好きなの』
「ぇ……」
あの時、わたしに触れながら、あなたは一体誰のことを考えていたの。
『音ちゃんのこと、好きなんでしょ』
「それは……」
『ならもう、二度とあんなことしないで。音ちゃんには何も言わないから』
一時の気の迷いだったと、ただ魔が差しただけだと、そう言って誤魔化してくれれば、全部許して終わらせる。
俺は音ちゃんが好きだと、わたしのことなんかなんとも思っていないと、ハッキリ言ってくれれば、それでいいのに。
「違う」
『違うってなに、だって晴は……』
「あの時、俺が触れたいと思ったのは、名前だからだ」