『わぁ、綺麗!』
「ほんと女ってそういうの好きだよな」
『うん。だってほら見て!スパンコールみたい!』
「スパン……?なんだそれ」
広げたたくさんの写真を見て、晴が不思議そうに首をかしげた。
写真は、昔小林さんが現地で撮ったものだそうだ。
留学に行くなら、昔自分が使っていた物をお譲りしますよ、と声を掛けてくれたので、今日は、そのお言葉に甘えて、小林さんから私物の資料やテキストを受け取りに来たのだ。
「で?」
『ん?』
「決まったのか、日程は」
主語は無いが、まず間違いなく留学のことだろう。こちらを見つめて、真剣な顔で言う晴に笑い掛けた。
『3週間後』
「え………3週間後って、だって、お前行くのは夏って……」
『うん。だいたいそのくらいの予定だったんだけど、すぐに準備してくれるって言うから』
「もう、ほとんど時間ねぇじゃねぇか」
うん。うなずくと、不満げに眉を寄せた晴には申し訳ないが、既にそれでお願いしますと返事もしてしまった。
『ちゃんと、頑張ろうって思ったんだよね』
「あ?」
『誰かに流されて、守られてばかりの自分じゃ、いつまで経っても前なんか向けないでしょ。だから、わたしはわたしのやりたい事をちゃんと見つけて、自分らしく生きようって、この間の晴見て思ったの』
いつまでも、報われない過去にくよくよしていても仕方ない。
晴が晴らしく、きちんと前を向いて歩き出したなら、わたしもきちんと自分の道を歩いて行かなければと。
『晴のおかげ』
「え、」
『ありがとう』
笑って言うと、一瞬驚いたように固まった晴が、同じように笑ってから、わたしの頭に手を置いた。
「名前」
『ん?』
「頑張れよ」
嬉しい。
ただ純粋に、そう思った。
『じゃ、これまとめてそろそろ帰ろうかな』
「なぁ名前、」
『ん?』
呼ばれた名前に、首をかしげて晴の方を向いた瞬間。ガチャン、とタイミング良く開いた扉の先で、こちらを見つめるよく知った顔と目が合った。
「え、」
「あ!名前!」
『めぐみ……』
まずい。
絶対に良くない勘違いをさせてしまった。
分かっているのに、嫌な顔一つせず駆け寄ってくる彼女に、どう接すれば良いのか分からなかった。
「名前もいるならちょうどいいや!」
『え、』
「あのね、すっごく良いこと思い付いたの!」
『凄い……楽しそう』
「だよね!ね?!晴くんは?どう思う?」
「あぁ、すげぇ良いと思う」
「良かったー!じゃあはいこれ、名前にも招待状」
『ありがとう』
嬉しそうに笑う彼女から手渡されたのは、誕生日パーティーの招待状。
永徳の生徒を一つにする為にも、みんなで盛り上がれるパーティーをしよう!という彼女らしい提案に、晴も嬉しそうだった。
「名前は紫耀くんも連れて来てね」
『え、』
「紫耀くんも学校は違うけど名前の彼氏だし、わたしの仕事仲間でもあるからオッケー!絶対一緒に来ること!」
『分かった。ありがとう』
「………」
追加で渡された招待状を受け取り、持っていた鞄にそれをしまう。
「ねぇ晴くん知ってる?名前の彼氏ね、超イケメンなんだよ!」
「知るか」
「も〜!ちょっとは興味持とうよ〜」
『めぐみ、もういいから』
あからさまに機嫌を損ねる晴を刺激しないよう、広げていた写真達をアルバムにまとめ、残りのテキストや情報誌を鞄に詰めた。
『じゃあ晴、わたしもう行くから』
「あぁ、分かった………気付けろよ」
『うん』
呟く晴の後ろで、黙り込むめぐみとは目を合わせられなかった。