『食事?』
「あぁ。良い機会だろ」


普段は海外や地方の拠点を飛び回り、ほとんど家にいない両親。そんな二人から、突然紫耀くんのご両親と食事会をすると告げられたのは、わたしが晴の家から帰ってすぐのことだった。


「6月2日の12時。日程は了承してもらっている」
『待って、その日は、』
「仕事か」
『仕事じゃないけど、』
「なら来い。先方だってお忙しいんだ」
『………分かりました』


わたしのワガママで取り付けてもらった婚約だ。これ以上勝手を通すことは出来ないと、仕方なく両親の言葉にうなずいた。
































「まぁ、そんな心配しなくても大丈夫だと思うよ?ウチの両親、結構フランクだから」

はい、と言いながら渡されたクレープを受け取り、目の前で微笑む紫耀くんに、ありがとう、と呟いた。


本当は、こんなにも早く会えると思っていなかった。

もちろん、紫耀くんに対してきちんと向き合う気持ちはあるが、それが晴との十数年を超えたかと言われれば、答えは否だ。

自分の中で、まだ中途半端な自覚があるからこそ、手放しには喜べなかった。


「にしても、永徳でパーティーかぁ。俺も一回行ってみたかったなぁ」
『ふふ、食事会の後時間があったら行ってみる?めぐみも喜ぶだろうし』
「まぁじ?俺絶対晴くんにキレられる自信あるわ」

楽しそうに笑って、大きく口を開けた紫耀くんが持っていたクレープにかぶり付く。

『ふふ』
「ん?」
『紫耀くん、ほっぺにクリーム』

頬をぱんぱんにして振り向く彼の方へ手を伸ばし、その顔に付いてしまったクリームを拭き取った。

「………やっばぁ、」
『ん?』
「なんか今の、めちゃくちゃカップルっぽくなかった?」
『え、そう?』
「そうだよ!うっわぁ〜、どうしよめっちゃテンション上がる」

道端だというのに、そう言って嬉しそうにはしゃぐ紫耀くんがなんだか少し可愛かった。

「あ、拭いてくれたのはそのまま舐めるんだよ?」
『ごめん、もう拭いちゃった』
「えぇ〜 最後までキュンとさせてよ」
『ふふ、』

残念がる彼の手を取り、きゅっと握り締めれば、同じように返してくれる。

『これでキュンとした?』
「………めちゃくちゃしちゃった」

その言葉にもう一度笑ったところで、どちらともなく、繋いだ手に指を絡めた。