結果的には、ただの偶然だと思う。
それでも、持って生まれた強運故か。男3人を一瞬でのしてしまった晴が永徳の生徒達に囲まれているのを見て、ホッとした。
『ねぇ』
「は、!はい、?わたしですか?」
『そう』
「何か…?」
突然声を掛けたわたしに、明らかな警戒を向けるその子に微笑む。
『これ、晴のだよね?』
そう言って拾い上げたのは、先ほどこの子が晴に投げ付けていた開運グッズ。
「あの、それは……」
『事情はよく分からないけど、晴は、そこまで嫌な奴じゃないよ』
「分かりません……」
『うん、そうだよね』
晴の良いところは、表に出ずらい。
ある誰かから見れば、それはとても横暴で身勝手に映るかもしれない。
しかし、彼がそうすることには、いつもきちんと理由がある。
「貴女も、わたしを追い出すんですか」
『え、』
「婚約者なんですよね?あいつの」
そう言って、悔しそうに拳を握る彼女の事情は分からない。
しかし、その言葉と、先ほどの状況を考えれば、大方の予想はつく。
『ねぇ。これ、使ってみたら?』
「え、」
『晴、見栄っ張りだから。脅しに使えば効果的面だと思うよ』
晴のことは好きだが、その晴に100%味方をするのかと聞かれれば、答えは否だ。
わたしにだって、許容出来ないことはある。
"わたしを永徳にいさせなさい"
"さもないと全部ばらす"
受け取った開運グッズを手に、脅しともとれるメッセージを掲げたその子は、続けて、おそるおそるわたしの方へ視線を向けた。
『ふふ、焦ってるね』
「………いいんですか。アイツ、婚約者なんですよね」
『うん』
「変な人、」
笑い返すと、不思議そうに呟いた彼女は、きっと晴にとって初めてのイレギュラーだったことだろう。
焦りからか、固まり、ジッとこちらを見つめる晴に手を振り、わたしもその場を後にした。