そりゃあ、家族だもん。
出会って数年の同僚とは、積み上げてきたものが違うのは分かる。

しかし、それでも信じてほしかった。
話だけでも、聞いてほしかった。



こういう時、いつもそばにいてくれたのは紫耀くんだった。

わたしが落ち込んでいると、いつも先回りして、寄り添ってくれる。その優しさが嬉しくて。この人のそばにいれば、ずっと笑っていられると思っていた。

もう二度と、こんな風に苦しむことはないと思っていたのに。


『………っ、』


結局、誰もいなかった。

わたしを信じてくれる人も。
救い上げてくれる人も。


いつもそばにいてくれた、大好きな人も。


もう、わたしのそばには誰もいない。



限界で、足を止めた先にある公園のベンチにうずくまった。


いつぶりだろう。こんな風に、人目もはばからず泣くなんて。

止めどなく溢れる涙を拭いながら、既にビショビショで冷たい服の裾に頭を埋めた時だった。




「———名前、?」




あぁ、どうして、こういう時に限って会ってしまうんだろう。



「おい、お前こんなとこで何してんだよ」
『……はると……っ…』
「は?おい、」


心配そうに、わたしの様子をうかがいながら声を掛けてくれる晴の顔が、いつになく優しかったからだと思う。

いつもならコントロール出来るはずの感情が、やり方を忘れたみたいに暴走してしまった。



『…うっ……っ、はるとぉ………』
「え?!」
『っ〜…………っ』
「ちょ、えっ、おい、!」


泣き出すわたしに、慌てふためく晴。

焦りからか、遠慮気味にわたしの頭へ触れる手が、妙にたどたどしくてホッとした。





















































「で?どうした、平野紫耀と喧嘩でもしたか」
『…………言いたくない』
「はぁ?ムカつくな」
『…………』
「お前じゃねぇよ。平野紫耀の為に、お前がそんなボロボロになってんのが、なんかすげームカつくんだよ」


きっと、深い意味は無いと思う。

身近な誰かが傷付いているから。その誰かである自分の為に、ここまで怒ってくれるのが嬉しかった。


「とりあえず、平野をぶん殴りに行くか」
『行かない、』
「なら不幸の手紙でも送るか」
『送らないよ、』
「んだよ、じゃあせめて家まで送らせろ」
『いい』
「いいってなんだ!理由も話したくねぇ殴るのもダメじゃ俺の気持ちが収まらねぇんだよ」
『…………』
「だからそれくらいさせろ」

な?と、不器用ながらも一生懸命こちらに寄り添そおうとしてくれる晴の言葉が、ボロボロになってしまった心を包み込んでくれるような気がした。


「名前」
『…………』
「いいから、たまには甘えろよ」


そう言って、差し出されたハンカチを躊躇いながらも受け取ると、晴は笑って、わたしの頭を撫でてくれた。