これから会いに行っていい?

あの日以来、久しぶりに晴へ送ったメッセージは、結局一日既読になることはなかった。

元々、彼はこまめに連絡を返してくれるタイプでは無い。
しかし、最後に会ったのがあの夜だったからか。
募る不安に、押し潰されそうになりながら彼の家を訪れると、そこには、予想外の人物がいた。


「やぁ名前さん。久しぶりだね」
『おじ様、ご無沙汰しています』

久しぶりに会う、晴のお父様。

こちらを見て、にこやかに笑うその表情は優しいが、わたしは、昔からこの笑顔がとても苦手だった。


「晴の見舞いか。わざわざすまないね」
『いいえ』
「全く情けない限りだよ。あの歳になって、自分の体調管理すらろくに出来ないとは」
『………失礼します』

どうしても、その言葉に相槌を打つことはできなかった。

精一杯努力し、懸命に頑張っていた晴の姿を知りながら、その全てを否定し、結果でしか物事を判断してくれない人。

経営者として当然。それが次期当主である晴への接し方だと言われてしまえばそれまでだが、幼い晴に、たった一度の失敗で、出来損ないの烙印を押したことは、今でも忘れられない。

部外者であるわたしですら、言葉に出来ないほど悲しかったのだ。

もしもあんな調子で、また何か酷いことを言われていたら。


今まで幾度と無く見てきた残酷な光景を思い出し、すぐにでも晴のそばにいたいと思う頃には、自分の不安など忘れていた。


晴に会いたい。

会って、なんでもない話をして、笑って、いつも通り堂々としていてほしい。


例え誰がなんと言おうと、晴はわたしの初恋で。

小さい頃から変わらない、唯一無二の人だから。


「お前は、江戸川音に恋したんだ」


たった一言。

その明確な言葉は、戸惑う晴の心を一掃し、そんな晴に恋するわたしの心を、鋭利な何かでグサグサと突き刺すような言葉だった。


「はあ?お前何言って、」
「いい加減認めろ」
「っ、ありえねぇ!だって、俺には名前という婚約者だって、」
「パンケーキデートを無理矢理セッティングしておいて何言ってる」

そうか。わたしの知らない間に、そんなことまでしていたんだ。

ずっと一緒にいたのに。自分には一度も無かったその誘いに、晴の特別を感じて息がしずらかった。


「小林……これは、恋じゃないよな、」
「それは……」
「飯が食えなくなったって、恋じゃないよな、?」

そうだよ。
違うよ。

晴、そんなのは恋じゃない。

そんなのは勘違いだから。

「俺が隠れ庶民なんかに惚れるはずがねぇ!」

誤魔化しでもいい。
苦し紛れの嘘でもいいから。

お願いだから、ずっとそう言っていて。

























「お、名前おはよ。見て、さっきそこでファンの子がぬれおかき…………どしたの」
『ん?何が』
「顔ヤバいけど」
『失礼だなぁ、そんなことないよ』

そうじゃなきゃいいなぁ。

どうか、晴が気持ちに気付きませんように。

叶わなかったその願いに、苦笑いを浮かべながら仕事をこなすことだけが、唯一の逃げ道になった。