「〇〇さん!これチェックお願いします!」
「あ、岸くんちょうど良いところに」
「はい!なんかありましたか?」
「うん、一緒にお昼行かない?」
「え!まじすか!?」
「うん、まじまじ」
新しい会社で、新しい人達と働き始め、早一ヶ月。
ようやく仕事にも慣れ、周りにも馴染めるようになって来た頃。直属の先輩から、初めてランチに誘われた。
〇〇さんは、俺の配属されたチームの2番手にある人で、なんでもテキパキこなす人。
俺以外にも、色んな人から頼られ、いつも忙しそうにしている。
だから、直属とは言え時間が合うこともなかったし、そもそもちゃんと飯食ってんのかな?と、心配になるくらいだったから、意外だった。
「何食べようか。岸くんは何が好き?」
「俺は蕎麦っすね!」
「蕎麦か〜天ぷらは好き?」
「はい!好きっす!」
「じゃあ美味しい天ぷら蕎麦食べられるところ行こっか」
「まじっすか!?天ぷら蕎麦!ッしゃあ!」
勤務中に比べ、少し砕けた優しい雰囲気。
仕事終わりや出社直後。たまにこの人が見せてくれるこの柔らかい雰囲気が、俺はとても好きだった。
「〇〇さんて、昼いつもどうしてるんすか」
「?どうしてるって、?」
「や、いつも俺が昼食ってる時は仕事してるし、戻っても食ってる様子とか無いから」
「そう?毎日ちゃんと食べてるよ?」
「ほんとっすか?」
「うん」
「でも、ずっとデスクにいますよね」
「う〜ん、まぁ、簡単に食べられる物が多いから」
「………カップ麺とかっすか?」
「ふふ、何でそんな小声で言うの?」
自分でも、似合わないと思ったから。
髪も服も、全部綺麗にしているこの人が、そんな物を食べているところが、想像出来なかった。
「別に、普通のサンドイッチとかだよ」
「え、それで腹いっぱいになります!?」
「うん」
「そうか〜、だから食べてるところ全然見ないんすね」
サンドイッチでお腹いっぱいというのは、さすがに嘘だと思う。
だって、目の前で俺と同じ量の天ぷら蕎麦を、何食わぬ顔で食っている〇〇さんは、幸せそうだ。
きっと、忙しいから仕方ないんだろう。
まともにお昼の時間も取れないなんて、そんなに大変なら俺が、と言えるほどの身分では無いことが、少しだけ悔しい。
「ねぇ岸くん、デザート食べない?」
「え、デザートっすか?」
「うん。わらび餅と抹茶のかき氷、どっちが好き?」
メニューに書かれた、期間限定という文字。
女の人って、こういうの好きだよなぁ、と思いながら、美味しそうな2つの写真をジッと見比べている時だった。
「お疲れ様」
「?」
座っている俺達の横から声を掛けてきたのは、いつか見たイケメン。
「お疲れ様」
横に立つソイツに、ニコリと笑いかける〇〇さんの笑顔は、とても綺麗だった。
まるで取引先を相手にしている時の様な、その綺麗な笑顔が作られたものだということを、俺はよく知っている。