「珍しいね、外でご飯食べてるなんて」
「そう?」
「しかも、デザートまでさ」

その人は、彼女がテーブルに開いていたメニューに視線を落としながら言う。
表情はにこやかだけど、なんとなく、その視線には違和感を感じた。

「あの、俺が、食いたくて、」
「……」
「デザート、食べたがったのは俺なんで」
「え、」
「へぇ、そうなんだ」

どうして、こんな事を言ったのかは分からない。
けれど、俺が言った瞬間、少しホッとしたように表情を柔らかくする彼女のことを見て、自分もホッとした。

「初めまして。平野紫耀です。〇〇の、部下だよね?」
「あ、はい!岸優太っす!」
「へぇ、岸くんかぁ、いつも〇〇がお世話になってます」
「え、あの、……?」
「改めまして、〇〇さんとお付き合いさせてもらってます。平野紫耀です」
「、あ、そういう、!?」

きっと、いるだろうなとは思っていたけど、まさか、こんな近くにいるとは思ってなかった。

〇〇さんの後ろに立ち、にっこりと微笑んでいる彼氏さんの姿は、とても様になっている。
というか、二人並ぶとお似合いすぎてオーラが半端ねぇ。

「あの、!すんません〇〇さん、彼氏さんいるのに、」
「ははっ、大丈夫だよ、俺そんなにちっさい男じゃないから」
「!?あ、すんません!いや、そういう意味じゃないんすけど、!」
「ふふ、岸くん焦りすぎ」

テンパる俺に、いつも通り笑う〇〇さん。
その笑顔にホッとすると同時に、彼氏さんから突き刺さる視線が、とてつもなく痛い。

そりゃ、そうだよな。
こんな綺麗な人、他の男と一緒にいるだけで心配だよな。

「そろそろ戻る?」
「うん、そうだね」
「じゃあ一緒に戻ろ。ここは俺が出すから」
「え、それは悪いよ」
「いいから。先出てて」
「、ありがとう」

彼氏さん改め平野さんに微笑まれ、申し訳なさそうに財布を仕舞った〇〇さんが、こちらに振り向く。

「デザート、食べ損ねちゃったね」

おそらく、平野さんには聞こえない声。
俺だけに、コソッと言って笑う〇〇さんが、いつもの柔らかい笑みを浮かべていて、安心した。

それと同時に、なんだか、その屈託の無い笑顔が、とても可愛らしいと思ってしまった。