「ねぇ、お酒弱いんだし、もうその辺にしといたら?」
「うっせぇ………放っとけばか、」
「そっちから呼んだくせに態度悪いなぁもう」
「……俺は今日飲むって決めたの」
「あっそ」
親友である神宮寺のオススメで、初めて来たバーのカウンターに頭を伏せる。
もう無理。
生きる気力が皆無。
本当に何もやる気になれない。
「そもそも何でこんなことになったの?上手くいってたんじゃなかったっけ」
「うん……」
「理想の彼女だったんでしょ?仕事出来て可愛い人で、」
「うん、」
「同期なんだっけ?」
「そう……」
「どんな子なの?」
聞かれて、ついさっきまで一緒にいた彼女のことを考える。
「すっごいね、美人なの、」
「へぇ、そうなんだ」
「ご飯食べてる時の所作とか綺麗だし、挨拶もきちんと出来る子で、みんなから慕われてる」
「うん」
「…………」
「で?」
出会った時から、良い子だなって思ってた。
きちんと挨拶が出来て、いつも一生懸命。誰にでも笑顔で接するところが本当に素敵で、絶対彼女にしたくて。
好きすぎて、どうにか自分の近くにいてほしいと、必死だった。
「…………めっっちゃ好きなの、」
「ん、?」
「笑顔とか、ほんと殺人級でさ……誰にも見せたくないの」
「ん?」
「気抜けてぼーっとしてる時の顔は防御力ゼロって感じですぐ抱き締めたくなるし、マジで俺だけが見えるところにずっと置いておきたいって思ってた、」
「………」
「だから〇〇にはなるべく誰ともご飯行かないでって言ってたし、行ったとしてもあんまり美味しそうに食べられると嫌だから、そういうことは控えてって言ってた」
「………」
「会社で誰かに弱いとこ見せるなんて絶対許せないから、ずっと綺麗で隙無い感じでいてほしいってお願いしてたし、他にも、」
「え、まだあんの?」
「うん、」
自分だけが知っている彼女を、誰かに知られてしまうのが嫌だった。
「紫耀、お前さ……」
「じんぐうじ……」
「ん?」
依存して縛り付けて。
なんとか彼女をそばに置いておこうと、必死だった。
「っおれ、……彼女のこと、〇〇のこと……っめちゃくちゃ大好きなの………」
「……知ってます」
「こんなに大好きでっ、〇〇のことで……頭いっぱいなのに…ッ」
「うん、そうだね」
「…うぅっ〜〜っ……じんぐうじぃ〜!」
「あー、はいはい……」
大好きで、大好きで。
どうしようもないくらい彼女しか見えてないのに。
何がダメだったんだろう。
どうして、こんな事になっちゃったんだろう。
「あいたい…………っ」
「うん、」
「〇〇に会いたいよぉ〜〜っ……」
「はいはい、そうだな、寂しいな」
「〇〇〜〜っ、……うぅっ、…」
自分でも覚えてないくらい、久しぶりに泣いた。
カウンターに突っ伏し、わんわん喚く俺のことを、神宮寺はずっと慰めてくれたけど、それだけじゃどうしても満たされたくて。やっぱり、〇〇じゃないとダメで。
「…………紫耀、〇〇ちゃんからラインきてるけど」
「え?!なんて…………」
一瞬で上昇した気持ちが、そのまま視界に入った〇〇からのメッセージで、すぐ絶望に変わった。
「…………なんで……」
"別れてください"
俺はこんなにも、〇〇のことが好きなのに。