「じゃあ、後は彼氏くんと楽しんでね」
「うん!ありがとう〇〇ちゃん」
「ありがとうございました!」
新と喧嘩したその日。
以前から会う約束をしていた心美ちゃんと一緒に、ランチをした。
彼女は、新の妹で、彼と付き合い始めた頃から、とても仲良くしてもらっている子だ。
生まれた時から血管に疾患があり、この子の為に、新は医者になった。
思えば、出会った頃は、まだ小学生だった彼女が、今や恋人と一緒にデートをするまでになるなんて。
時の流れは早いなあ、と嬉しそうに彼氏くんと話している姿を見て、少しだけ寂しくなった。
「あの、お姉さん」
「?…わたし?」
「すみません俺、ご挨拶が遅れて、」
「え、」
「ゆうまです」
きちんと背筋を伸ばし、頭を下げた彼に、一瞬何が起きたのか分からず、停止してしまった。
隣を見れば、それは心美ちゃんも同じようで、二人で一度顔を見合わせた後、意味を理解し、同時に吹き出した。
「っあはは!違うよゆうま、〇〇ちゃんはお姉ちゃんだけど、お姉ちゃんじゃないの」
「え、?どういうこと?」
「〇〇ちゃんは、わたしのお兄ちゃんの彼女!」
「そうなんですか!?」
「あ、うん。勘違いさせちゃってごめんね」
隣に並ぶと、やはりそう見えるのか。
酷く緊張した様子で頭を下げてくれた彼には申し訳ないことをしてしまったと、軽く笑った。
「でも、もうすぐ本当にお姉ちゃんになるから、挨拶はしておいて正解かも」
「そうなんですね!」
「あー……はは…」
無知故の奔放さが刺さる。
結局、最後まで彼女に何も伝えなかったわたしが悪いが、ここまで真っ直ぐな視線を向けられると、罪悪感で胸が痛かった。
昔から新との仲をうらやみ、いつか自分もこんな風に仲良くなれる彼氏を見つけるんだ!と、豪語していた心美ちゃんを知っているからこそ、報告出来ない。
「じゃあ、行ってきます!」
「うん、楽しんで来てね」
楽しそうに、ニコニコと笑って手を振る姿は、本当に幸せそうだ。
そういえば、自分も新と付き合い始めた頃、こうして二人で夏祭りに行ったな、と思い出す。
あの頃は、まだ心美ちゃんも小さくて、なかなか二人で出掛けられないことを気に病んだ新は、いつも申し訳無さそうだった。
たまに、心美ちゃんが入院するタイミングで出かける事があっても、今度はその事が申し訳ないのか。浮かない顔をする新に、そんなの気にしてたら〇〇ちゃんが可哀想!と怒ってくれた心美ちゃんは、あの頃から、わたしにとっても大切な存在だ。
例え、病気で普通の人とは同じ生活が出来なくても、いつも明るく笑っている彼女だからこそ、彼も惹かれたのだろう。
仲良く歩いて行く二人の背中を見送り、自分も少し買い物をしてから帰ろうと、駅前を通りかかった時だった。