「口紅、今日どの色にしようか」
『ん〜、濃いめがいいな、』
「気合い入れたい日?」
『そういう訳じゃないんだけど、』

ジュニアの頃からお世話になっているメイクさんに聞かれ、少しドキッとした。

「じゃあ、今日はコレね」
『わ、真っ赤だ』
「かっこいいお姉さんにしてあげるから、頑張ってね」
『はい、』

濃いめの赤が着いたリップブラシを持ち、優しく微笑んでくれるメイクさんに、少しだけ緊張がほぐれた。

『……あ、ごめんなさい、電話出てもいいですか』
「うん、もうほとんど終わってるし、大丈夫」
『、もしもし、〇〇だけど』










「あ、〇〇、おはよ」
『うんおはよ、どうしたの』
「や、特に用は無いんだけど、なんとなく?」
『何それ笑 岸くんも今日仕事でしょ?ちゃんと起きれた?』
「当たり前だろ。バッチリ2分前到着だっつーの」
『2分前?それ遅くない?』
「遅れてないんだからいいんだよ!……〇〇は、まだ控室とか?」
『うん、今メイク終わったところ』
「そっか」

スピーカーにしていた設定を切り、スマホを耳に当てる。

『ね、岸くん、』
「ん?」
『ありがとね、』

メイク室の鏡に映る自分が、あまりにも不安そうな顔をしていたから、少しだけ甘えたくなった。








「やっぱ、電話して良かったわ」
『ふふ、岸くんはなんでも知ってるね』
「そりゃ、リーダーだからな」
『うん、ありがとう、』
「ちゃんと差し入れ食って、いつも通りやれば大丈夫だから。今日なんか食った?」
『ううん、まだ』
「よし、じゃあ今すぐ目の前にある物食え!」
『……使い終わったティッシュ』
「捨てろよ!」

リップオフの際に使ったゴミを丸め、差し入れに置かれていたお菓子に目をやった。


『ね、岸くん』
「ん?なに」
『今日撮影何時まで?』
「んー、押さなきゃ9時には終わると思うけど……飯でも行く?」
『うん、そう言おうと思ってた』
「じゃあそっち終わったら連絡して」
『、もう切る?』
「あー、2分くらいなら平気だけど、」
『そっか、ありがとう。……ごめん、もう切るね』
「〇〇」
『ん?』
「大丈夫だから。頑張ってこい」












「お疲れ様。どうだった?」
『うん、意外と大丈夫だった』
「そっか、それなら良かった」

約束の仕事終わり。
先にお店に入っていた岸くんのもとへ合流すると、珍しく落ち着いた笑顔で、優しく笑ってくれた。


『うぅ……岸くーん…』
「んだよ、どした?笑 疲れちゃった?」
『うん、なんか一気に力抜けて、』
「そっか、それだけ頑張ったってことだな」
『………今なら岸くんに惚れそう』
「え、俺〇〇とは付き合えないけど」
『そんな本気で答えなくていいよ恥ずかしいじゃん』
「あ、でも〇〇はめちゃくちゃ可愛いし、すっげー良い子だと思うから自信待てよ!」
『何でわたしがフラれた感じになってんの、笑』


たまに一人でこなさなければならない、大きな仕事。

不安で、寂しくて、どうしようもない気持ちになると、それを察して