「はーい。朝ですよー」
「……」
「起きてくださーい」
「……」
「紫耀くーん」
「……」
「おはよう」
「………うん」

ロケの為訪れた地方のホテルで、いつもより少し遅めの朝を迎えた。

「廉、いるなら知らんぷりしないで」
「断る」
「紫耀が起きないからってわたしのこと呼んだの廉でしょ。手伝ってよ」
「聞こえへーん」
「も〜紫耀が寝坊したら廉のせいだからね」
「それは紫耀のせいやろ」
「……んー、〇〇〜、起こして、」
「ダメ。ちゃんと自分で起きて」
「おねがい、」
「紫耀」
「〇〇……お願いだから」
「……も〜」
「折れんの早いやろ」
「わっ、」

ベッドから伸ばされた腕を掴もうとすれば、それを遮るように、わたしの後ろから腕を伸ばした廉が、紫耀の手を握った。

「おい、」
「なんや」
「お前の手じゃねーよ」
「ほんま仕方ないなぁ紫耀くんは、ほら、起こしたるやん」
「〇〇助けて。捕まった」
「この写真ブログに上げていい?」

廉に引っ張られ、布団から半身を出している紫耀。

「おら起きろや」
「いでっ、」

そのまま布団から引きずり出され、ベッドの下に落下した。


「………〇〇、」
「おはよ、紫耀」
「はよ……」
「ん?」

声を掛けると、薄っすら目を開けながら、ちょいちょい、と手招きする紫耀に首をかしげる。

「なーに?」
「もっと、こっち……」
「ふふ、目付き悪いよ」
「、裸眼なの……〇〇ぼやける、もっとこっち」
「わがまま」

サイドテーブルに置いてあるメガネは、度入りなんだろうか。
よく分からないけど、床に突っ伏している紫耀をこのままには出来ないと、近付き、それを手渡した。

「おはよ、」
「うん、おはよう」
「寝起き〇〇で幸せ」
「お前の今日の一番は俺やろ」
「廉ほんとうるさい。早く仕事行きなよ」
「殴ってえぇ?」
「返り討ちにしてやるよ」
「はいはい、いいから早く起きてね」
「じゃあ〇〇起こして」
「どうしたの、今日やたら甘えるね」
「そういう気分なのー」

早くー、と腕を伸ばして甘える紫耀の手を、今度こそ掴んで引っ張った。

「ちょっと、紫耀、」
「んー」
「こら、起きる気ないでしょ」
「うん、もうちょっと、」
「寝癖凄いよ」
「〇〇が直して」
「なんで今日そんなわがままなの」
「分かんない、そういう気分、」

掴んだ手に指を絡め、ぎゅっと掴まれた。

理由は分からないが、わたしにだってそういう日はある。
疲れているなら、誰かに甘えたい時だってあるよね、と未だ床に突っ伏したままの頭を、よしよしと撫でた。

「あぁーー〇〇〜」
「ん?」
「廉いない?」
「うん、シャワー浴びに行ったよ」
「なんかお腹痛い、」
「………あ、そういうこと」

メンタルではなく、フィジカルか。

「大丈夫?」
「うん、動けないほどじゃないから」
「わたし薬買って来るよ」
「いい、多分すぐ治まると思うし」
「本当に?大丈夫?」
「うん、」

弱々しく呟いた紫耀の頭をもう一度撫で、握られた手に力を込める。

「〇〇……」
「ん?」
「ちょっとこうしてて……」
「うん、」

弱々しく呟いた紫耀の隣に座り込み、落ちていた毛布を体にかけた。