「飲み会?」
「そ。紫耀んとこの部署と、あともう一ヶ所合同なんだけど、来るでしょ」
「うーん……まあ予定も無いし別にいいけど」
「じゃあ19時集合ね。お店の場所はラインするから」
「分かった」
週の半ば。出勤するなりそう言われ、デスクに戻ると、橋がわたしの卓上カレンダーに、可愛く『飲み会♡』と書いていた。
週末が飲み会になるなら、彼には会いに行けないな。
メッセージのやり取りが、ちょうど先週の誕生日で終わっている彼とのトーク画面を見て、溜め息を吐いた。
『そっかー。じゃあ仕方ないわな』
「うん、ごめんね」
『いいっていいって。りおの飯食えないのはちょっと残念だけど、付き合いだって大事だろ』
「付き合いって言っても、同期だけしかいない内輪の飲み会なんだけどね」
『そっか。何人くらいいるの?』
「うーん、三部署合同だから30人くらいかな」
『それって結構遅くなる感じ?もしあれだったら迎え行くけど』
「あー……どうだろ。時間はまだ分かんないから、」
『そっか。じゃあ、当日時間分かったら連絡ちょうだい』
「うん、ありがとう」
会社の休憩室で電話をしながら、持っていた手帳に飲み会と書き込む。
「お、りおー!」
「?」
本当は、飲み会と言えば、ちょっとは嫌がってくれるかな、なんて思っていたけど、そんな落胆を掻き消すように、休憩室のドアが開いた。
「あ、平野」
「お疲れ。……て、ごめん電話中だった?」
「ううん、もう終わるから大丈夫。ごめんね」
「いや、俺こそごめん」
顔の前で小さく手を合わせながら、申し訳なさそうに眉を寄せる平野が、ちょっとだけ可愛い。
「優太?ごめんね、じゃあ、金曜日また連絡するから」
『うん、飲み会楽しんで』
「ありがとう」
『あ、あと!お前そんなにお酒強くないんだから、飲み過ぎには気を付けろよ』
「うん」
「………」
じゃあ、と、すぐに切られた電話の画面を閉じ、少し先でコーヒーを淹れていた平野の横に移動する。
「ごめんね。気使わせちゃって」
「別に。相手彼氏?」
「うん、飲み会のこと報告してた」
「なんだって?」
「終わる時間分かったら連絡ちょうだいって」
「おぉ、優しいじゃん」
「だね、」
普段わたしと会うことにそこまで執着しないのに。
どうしてこのタイミングで、あんな優しいことを言うんだろう。
「平野も行くんだよね、飲み会」
「まあ、一応な」
「お酒強そうだもんね」
「そう見える?」
「うん」
「ほんとはどっちだろうね」
ニヤリと笑って、楽しそうにコーヒーを啜る平野は、おそらく飲めるタイプだろう。
逆に、この感じで飲めないという状況が想像出来ずに決めつけたわたしを、平野は楽しそうに見つめていた。