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「ジョシュア…良かったら、ちょっと飲まない?」

食堂から出たら、あの女、アンジェラが俺を待ち伏せしていたかのように誘いをかけて来た。
もちろん、俺もアンジェラとは話してみたいと思っていた。
俺のことを全く知らないくせに、俺との結婚を了承した女だ。
一体どういうつもりなのか、訊いてみたかったのだ。



「あぁ、良いぜ。
じゃあ、俺の部屋はどうだ?」

「ええ、いいわよ。」

「ライアン…酒の支度を頼む。」

「かしこまりました。」



近くで見ると、本当に美しい女だ。
こんな綺麗な女と結婚出来て、屋敷や使用人までもらえるとなれば、断る男はいないかもしれない。



だけど……逆の立場からしたらどうだ?
そりゃあまぁ、俺だって、見てくれにはそれなりの自信がある。
だが、俺は、それをいいことに女を騙して来た結婚詐欺師だ。
アンジェラがそのことを知ってたかどうかはわからないが、今日、俺は、夕食の場ではっきりと言った。
結婚詐欺なんてことを生業にしていた男と、結婚したいと思う女がいるだろうか?



まぁ、今日の酒の誘いが、結婚詐欺師はお断り!って話なら、わかるんだが…
だが、アンジェラの表情を見ている限りでは、そんな風には思えない。
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