しおり一覧




「じゃあ、乾杯しましょうか。」

「乾杯?一体、何に?」

「そうね…私たちの出会いに…!」

俺たちは、赤いワインで満たされたグラスを合わせた。
乾いた高い音が、部屋に響く。



アンジェラは、酒にもけっこう強いようだ。
ふと、もしかしたら、以前は酒場で働いていたのかな?と、そんな気もした。


「良い部屋をあてがわれてるのね。
窓が多いから、昼間は日当たりが良いでしょう?」

「あぁ、まぁな。
あんたの部屋は日当たりが良くないのか?」

「良くないって程じゃないけど、ここよりはね…」

アンジェラはやはり人馴れしている。
俺とはほぼ初対面だっていうのに、緊張する様子はまるでない。



「あの……聞きたいことがあるんだけど…」

飲み始めてまだ間もないのに、こんな話をするのもどうかと思ったが、とにかく気になってたので、抑え切れなかった。



「何?」

「えっと…まず、あんたはどこから来たんだ?」

「私がどこから来たか…って?
……こことは違う世界よ。」

「え…?」

この時の俺は、相当、間の抜けた顔をしていただろうと思う。
しおりを挟む - 55 -
小説TOP
ページ:
comment 0