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「……そんなに気になる?」

「気になるっていうか…異界なんて俺は全く知らないし、想像も付かないからな。」

「気にすることなんてないわ。
そんなことより…あんた、私と結婚するのがいやなの?」

「それを言うなら、あんたはなぜ平気なんだ。
俺のことなんて、ほとんど知らないだろう?
しかも、さっきの夕食会で、俺は言ったよな。
結婚詐欺師だってこと。
あんたは、それを聞いてもなんともないのか?」

俺がそう言うと、アンジェラは鼻で笑った。



「……そんなことがなんだって言うの?」

「そんなこと?
俺は、結婚詐欺師だって言ったんだぜ。」

「私は今までずっと苦労して来たからね。
あんたがどんな人かなんて、興味はないわ。
だって、あんたと結婚すれば、私は何不自由ない生活を手に入れられるんだもの。」

そう言ったアンジェラの瞳に、迷いはなかった。
ずいぶんと肝の据わった女だ。
いや、それだけ苦労して生きて来たということなのか。



「生活に困らないことは確かに魅力的だ。
それに、あんたはとびっきりの美人だしな。
だけど…やっぱり、俺はいやだ。
人生を決めつけられるのはごめんだ。」

「じゃあ…どうするつもりなの?
あんたがそんなことを言ったら…王様がどうするか、わからないの?」

アンジェラは、冷ややかな視線で俺をみつめた。
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