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「モルドに戻りたくない理由でもあるのか?」

「いえ…そういうわけではないのですが……
あの…私が同行する際、カンナは…弟はどうなるのでしょう?
弟は、頭に怪我を負ったせいで記憶を失っており、ひとりにしておけないのですが…」

「記憶を…?
それは大変だな。
なんなら、私の知り合いの医師に診せても良いし、知り合いの屋敷で面倒をみても良いが…」

「いえ…お気持ちはありがたいのですが、やはり、心配ですから私の傍に置いておきたいのですが…」

「……そうか。
では、弟も同行すれば良いだろう。」

口ではそう言ったけど、アルバートさんの私を見る目はどこか冷たいものだった。
だよね、だよね。
私はさっきも隠れてたくらいだから、剣が使えないことはもうわかってるだろうし、さらに記憶喪失ってことになったら、ただ面倒臭いだけの存在だもんね。



「ありがとうございます。
それでは、同行させていただきます。」

ネイサンさんは、本当に良い人だね。
何の義理もないのに、私のことを考えてくれて…
なんだか胸が熱くなる。



でも…ネイサンさんが仕事を引き受けたってことは、私たちは今からモルドってところへ行くんだよね?
なんだか事態はどんどん複雑になっていくけど…
一体、どう理解すれば良いんだろう??
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