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若いうちに死んでしまう人はけっこういる。
なのに、私は、自分がその部類に入るなんて、考えたこともなかった。
『死』は、私には関係のないものだと思い込んでいた。



(なんの根拠もないのに…馬鹿だな。)



両親には、ただ申し訳ない気持ちだけだった。
親孝行の真似事さえ出来ないうちに、死んでしまって…
こんなことになるとわかってたら、いっぱい親孝行したのに…
それだけじゃない。
家族には悲しい想いをさせてしまった。



(ごめんね…本当にごめんね……)



「カンナ、具合は……」

不意に声をかけられて、私は涙を拭く暇もなかった。



「どうした?なにかあったのか?」

アルバートさんは驚いたような顔をしていた。



「そ、それが、目にゴミが入ってしまって…」

「なんだ、そうだったのか。
泣いてるから驚いたじゃないか。」

アルバートさんはそう言って笑った。



詳しいことは知らないけど、アルバートさんはどうやら名門貴族の人みたい。
そして、オスカーさんはアルバートさんのお屋敷の使用人。
モルドがあの世だとしたら、オスカーさんとアルバートさんも死んだってことになる。
でも、二人はそのことに全く気付いてる様子はない。
そういう意味ではネイサンさんも。



なんでかな?
そういえば、あの世の存在を信じてない人は、自分の死をなかなか受け入れられないとか聞いたことがある。
そっか、私は漠然とだけど、信じてたから気付けたのかな?
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