10
あぁ、どうしよう!?
お姫様抱っこだなんて、初めての体験だよ。
現実だけじゃなく、芝居でもない。
その事実を再認識して、私の緊張はさらに高まる。
とてもじゃないけど、アルバートさんの顔が見られないから、目が開けられない。
「……随分と軽いな。
もっと食べて、鍛えないといけないな。」
「はい。」と言いそうになって、咄嗟に言葉を飲み込む。
今は、気絶しておいた方が良い。
だって、返事をしたら目を開けないといけないもの。
そんなの恥ずかしい。
(あ……)
私は、ベッドに置かれた。
きっと、ここはアルバートさんの部屋だろう。
アルバートさんの手を離れたことで、少しほっとした。
「カンナ!大丈夫か、カンナ!」
「う、うぅん……」
白々しい演技をしながら、私はゆっくりと目を開けた。
「わっ!!」
目の前に、アルバートさんの顔があったから、私は驚いて変な声を上げてしまった。
まつ毛が長い…それに、なんて綺麗な瞳の色なんだろう。
まるで宝石みたい。
間近で見たアルバートさんは、神々しい程に美しい。
「気が付いたか?
私がわかるか?」
「は、はい、わかります。」
アルバートさんは、微笑んで私から顔を離した。
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