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「長い間、君に騙されていたと思ったら、腹が立った。
だから、今日、その仕返しが出来てすっきりしたよ。」

「え……?」

そりゃあ、その通りかもしれないけど…
女だってことに気付いたのに、知らんふりするアルバートさんも意地悪だよ。



「でも、正直言って、自信はなかった。
もしも、断られていたら、私は大勢の人々の前で大恥をかくところだった。」

「あ…あの…なぜ、私なんかを……」

アルバートさんは、私をみつめ、そして穏やかに微笑んだ。



「私の気持ちはまるで伝わっていなかったのか?」

「え…そ、そりゃあ…
だって、アルバートさんはオルリアンの王子様ですし、しかも、私は男のふりをしていた。
アルバートさんは、弟が欲しかったとおっしゃられていましたし、私は弟のように思われているのだと…」

「……鈍感だな。
私は、自分の気持ちを悟られたらどうしようと、いつもひやひやしていたというのに…」

そう言ったアルバートさんの視線はちょっと意地悪で……



「君は、私のことを兄としか見ていなかったのか?」

「そ……それは……」

「正直に言ってくれ。」

良いの?言っても…
でも、恥ずかしくて言えないよ…



アルバートさんは、黙ったまま私をみつめて…



「……好きでした。」

私は、催眠術にでもかかったかのように告白していた。



「そうだな。酔って倒れたあの晩も、大好きだと何度も言ってくれた。
しかし、あの言葉はどういう意味合いの好きなんだ?
今、はっきりと聞かせてほしい…!」

「わ…私は……」

良いんだね…本心を言っても良いんだね?



「私…アルバートさんのことが好きでした。
もちろん、それは…その…恋愛感情です。」

蚊の鳴くような声でそう言うと、アルバートさんは私の体を抱き締めた。

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