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「嬉しいよ…その言葉が聞きたかった。
私も君が好きだ。
最初は本当に弟のように感じていた。
だが、途中から何とも言えない不思議な感情を抱いていることに気が付いた。
私はもしやおかしいのではないかと悩んだことさえあった。
だから、君が女性だと知った時は、本当に嬉しかったし、ほっとした。」

「アルバートさん……」

「実を言うと、私は祈りの塔で、君と結婚出来るようにと願ったんだ。
だが、五年もの長い間、その願いは叶わなかった。
……それは偏に私の意気地のなさゆえだ。
何度も告白しようと思った。
だけど、怖かったんだ。
もしも、断られたら…そう思うと、どうしても言えなかった。」

信じられない。
なんでもそつなくこなせて、自信にも満ち溢れているように見えるアルバートさんが、こんなにも繊細な人だったなんて…
しかも、私なんかのためにそんなに悩んでくれてたなんて…



心配なことはまだいろいろとあるけれど…
アルバートさんと一緒なら、どんなことだって乗り越えていけそうな気がする。



「アルバートさん、ありがとうございます。
私…ずっとあなたについていきます。」

「カンナ……」

アルバートさんの顔が近付いて来て、目を閉じた途端に、やわらかな唇が重なった。
その感触は、夢ではなかった。
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