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「カンナ…今後のことなんだが…」

アルバートさんとジョシュアさんが帰った後で、ネイサンさんがどこか言いにくそうに話し始めた。



「はい、なんですか?」

「私と兄弟という話はどうする?
そのままにしておくか?」

「あ……はい、そうですね。
私はその方が良いと思うのですが、ネイサンさんはどう思われますか?」

「今、どうしたものかと悩んでいる。」

「悩む?どうしてですか?」

ネイサンさんはすぐには答えなかった。
何かを考えるように、じっと一点をみつめて…



「……そうだな。
今のままで良いかもしれない。
あ…魔方陣に呼び出されたことは、絶対に言ってはいけないぞ。」

「はい、それはもちろん!」

「あのことは忘れるんだ。」

それは確かに考えたくないことだった。
考えると不安になるから。
でも、私とネイサンさんが黙っていれば、問題はないはず。
あの秘密は、私とネイサンさんしか知らないんだもの。



「カンナ…酷なことを言うようだが、多分、君はもう元の世界には戻れない。
だから、諦めるんだ。
諦めて、この世界で幸せになるんだ。……良いな?」

「……はい。」

それも、考えたくないことだった。
わかってる…理性ではもう諦めも付いてる。
でも…やっぱり時々は感情の方が勝って、どうしようもない気分になってしまうんだ。



(だけど……)



今日からは違う。
結婚をきっかけに、考えを改めよう。
きっと、家族だって、私の幸せを祈ってくれてるはず。
だから、戻れなくても、私、しあわせになるよ…この世界で…
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