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「ネイサン?知らねぇなぁ…」

私達は、手分けをして町の酒場を片っ端から訊いて周った。
だけど、ネイサンさんらしき人の話は、全く聞くことが出来なかった。



「おかしいですね。
まさか、ルーランに来ていないなんてことはないでしょうね?」

「実は、私もそのことを考えていた。
ネイサンは、モルドに戻ることになったとは言ったが、ルーランに戻るとは言わなかった。
もしかしたら、私達は見当はずれのところに来てしまったのかもしれないな。」

その場の雰囲気が、急に沈んだものに変わった。
せっかくこんな遠くまで来たのに、それが意味のないことだったとしたら、そりゃあ落ち込むよね。



「あ、で、でも…町で訊いてみるっていう手もありますよ。
兄は割と早くにルーランから出たようですが、もしかしたら、家が残ってるかもしれないし。
家がみつかったら、近所の人が兄が戻って来てたかどうかを知ってるかもしれませんし。」

「それもそうだな。
とにかく、一旦、宿に戻ろう…」

「あ、アルバート様、あそこにも酒場があります。
俺、ちょっと聞き込んできますね!」

そう言って、ジョシュアさんは駆け出した。



「カンナ…何か、思い出すことはないか?
君達の暮らしていた場所がルーランのどこかはわからないが、この町には何も記憶はないか?」

「は、はい…残念ですが、何も……」

嘘吐いてごめんね、アルバートさん。
私、ここに来たのは初めてだから、何もわからない。
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