【特殊災害対策特務班(アーク)】……超能力を用いて人大災害の対処や人命救助にあたる課の総称。ここで勤務する人たちはみんな国家公務員。オシャレじゃないチーム名がある。日本で現在5人しか確認されていないレベル7の能力者のうち3人がアークに所属している。

【機械仕掛けの鸚鵡(パロットイズ)】
東条、金丸、柏谷の三人チーム。
波留は超感覚のレベル7。接触感応能力(サイコメトリ)の能力者なので後方支援。
金丸は電磁操作、登場は風力操作のレベル3。技術者のエリート

【終末の蛇(リヴァイアサン)】
太陽と潤のコンビ
太陽は瞬間移動能力(テレポーテーション)のレベル5
潤は複合能力のレベル7。現在確認されている日本国内の能力者で最強。女王の名を欲しいがままにする。魔術師を越えて錬金術師<アルケミスト>って呼ばれてる。かっこいい。

【猟犬(ハウンド)】
雷市と梓のコンビ
雷市は合成能力のレベル6で動物並みの五感と筋力を手に入れることができる
梓は念動能力のレベル7。二人が暴れると手が付けられないので厄介者でもある。

【兎の守り神(ラビット・フット)】
超能力者を憎むテロ組織。無能力者も能力者も属している。
逃げ足の速さと魔女狩りの隠喩
御幸、鳴、真田がメンバー代表


***


 なんで年度更新なんだろう。いつの間にか代替わりした総理に頭を下げながら波瑠は思った。
 両隣に座る少女たちも大体同意見、もしくは真面目ぶった顔をしながら欠伸を噛み潰していることを確認して、机上の誓約書にサインをする。記載されている内容についてはたいして確認はしなかった。毎年見ているというのに対して頭に入ってこない内容が羅列されている。
 『わたしたち、特殊災害対策特務班ーー通称<アーク>は、自身の(願ってもいない)特殊で稀有な能力を(日本国と国民のために)適正に使用し、(一般人の)市民を保護し、(一般人の)人命を第一に行動することをここに誓い、(自身の能力と自由意志と尊厳と大凡この年代の少女らしさ諸々全てを犠牲に)責務を全うすることを宣言します』
 要は使い捨ての雑巾と同じだ。権利は大多数のためにあり、少数派というのはいつも肩身の狭い思いをする。大多数の者が持ち得ない能力を持っているとすれば、尚更なことだ。東京の一等区、首相官邸の一室に集められた三人の少女たちは物心ついたころから世の中の仕組みを身をもって理解していた。

 21世紀に入って、ある日を境に特殊な能力を持つ者が確認され始めた。手から炎を出したり、人の心を読んだり、物質を触れずに動かしたり。俗に「超能力」と呼ばれてきたそれらの能力を持つ人々はその日を境に増え続けた。生まれつき力を持つ者、成人したのち何かのきっかけで能力に目覚める者、様々であった。
 今まで表沙汰になっていなかっただけで、脳波の研究は古くから国を挙げて行われていたのだが、研究のスペシャリストたちですらその現象を解明することはできなかった。
 現在では4人に1人は何らかの超能力を持っているとまで言われている。様々な種類に分類される能力だが、力の強さを7段階に分け、成長期の能力判定時に分類される。レベル0が能力を持たない一般人。微力な力を持つ者からレベル1に分類される。数字が大きくなるほど能力は強力になり、レベル3を超える能力者ともなれば滅多に出会うことのできない逸材である。最高レベルの7は天災と同レベルとされており、日本国内で今まで5人しか認定されていない。
 レベル5以上の能力者はすべて国が管理・保護する条例が定められており、未成年のうちはその能力を健全に使用できるようになるまで国の保護下で能力を伸ばし、正しい方向へ導くための教育を施される。その多くは能力が顕現した段階で施設に預けられ、災害や人命救助の訓練を施される。

「君たち能力者は我が国の誇りだ」
「ありがとうございます。総理、私たちの能力は神様からのギフトだと言われてきました。特殊な力を持つ私たちをここまで育ててくれた家族や周りの方々のためにこの能力を使っていきたいです」
 総理の労いの言葉に頬笑みを湛えて返したのは星野潤。美しい黒髪と誰もが振り返る美貌を湛えた彼女はレベル7<複合能力>の保持者だ。生まれた時から計測不可能な能力を持っていた彼女は生まれてすぐに施設へと預けられ、親の顔も知らないままに超能力者として厳しい訓練を積まされてきた。アークが組織として確固たる地位を築き上げた時にはレベル7として活動していたため17歳という年齢だが組織では古株であった。
(いいから長い話終わらせて早く解散させろって、ジジイ)
 街を歩けば芸能人かと見紛う美貌の彼女は心の中で舌を出す。複合能力者は数ある能力の中でも珍しい。能力の適正が複数に渡り、それらの力を組み合わせて新たなエネルギーを生み出すには膨大な念動力を必要とするため、今まで記録されてきた複合能力者のレベルの上限は3とされていたのだ。それを覆したのが彼女だ。古くからアークに勤める潤は今では超能力者の顔と言っても過言ではなかった。

「それでは、今年度もよろしく頼むよ」
「はぁい」

 深々とお辞儀をして、部屋を出たあとに三人の表情は一変した。国の最高権力者を前にしても緊張の素振りすら見せない彼女たちは揃いも揃ってレベル7の超能力者だった。一人一人が軍隊一小隊と同じだけの力を身体に秘めているのだ。17歳の少女らしく、と言われてもその「らしさ」すらも理解できない少女たちだった。
 少女らしく演じていた微笑みを一瞬で真顔に戻して、潤は悪態を付く。
「……話長いわクソが。女子高校生の貴重な時間舐めんなよ」
「いつ総理変わったの?記憶にないや」
「まあまあ。長い話聞いてたらお腹空いたよね。ぱーっとご飯でもいく?」
「行くいく。梓、連れてってくれるの? 私本場の小籠包食べたいんだよね」
「どこでも梓ちゃんじゃん、お願いしていい〜?」
「えへへ、任せてよ。ちょっくら台湾まで、いってこよー!」
 女子高校生らしい楽しそうな会話の内容に、首相官邸に控えていた官僚たちはなんだと目を向けるが、彼女たちの姿を目で追おうとしたときには、三人の姿は既に消えていた。

 <物体移動>物質の座標を把握し、三次元の軸上に座標を転移させることでそっくりそのまま物体を移動させる能力。これは高度な念動力が必要で、高い空間把握能力が必要となるのだが、それを可能とするのが扶桑梓だ。年頃の少女たちよりも頭一つ分高い背と腰よりも長く伸ばした赤毛がチャームポイントの彼女の能力は<念動能力>手を振れずに物体を動かすポピュラーな能力だが、レベル7ともなれば人間くらいならば簡単に別座標に転移させることができた。勿論、正規の能力である<瞬間移動能力>を持つ者に比べれば精度は落ちるが、東京と台湾くらいの距離ならば何度か転移を行えば簡単に送り届けることができる。

「梓、また精度上がったんじゃない? 太陽が悔しがるわ」
「そうかな? でもまあ、転移は集中しなきゃできないから、暴走する心配なくていいかもしれない」
「空間移動系の能力、格好いいし便利だよね。あ、小籠包3つください」

 どこからか突然現れた少女たちに、屋台の店主は驚きもせずに小籠包を差し出す。超能力者が現れたのは何も日本だけのことではない。今や世界は超能力者で溢れているのだ。誰もが強力な能力者を喉から手が出る程欲していた。扱いようによっては兵器にもなりうる。化け物を見るような視線にはもう慣れ切っていた。
 饅頭を頬張る姿はどこにでもいる女子高校生そのものだ。力を使わずとも目を引く三人娘に声を掛けようと現地の青年たちが近寄った時にはもう、彼女たちの姿は消えていた。

***


「ね、次の任務さ。勝負しない?」

 パンケーキを行儀よくナイフで切り分けた潤が徐に口を開いた。蜂蜜を舐めとる様まで絵になる彼女の発言に、梓と波瑠は考えもせずに答えを出す。

「いいよ」

 いつの間にか都内に戻ってきていた彼女たちは洒落たカフェで談笑に耽っていた。
 話題にあがった任務というのは彼女たちに課される仕事の内容である。ある時は災害に巻き込まれた人々の救助。森林火災の消火の補助や未解決事件解決のため呼び出されることもあった。アークから召集がかかり、それぞれの能力を活かせる場所へ派遣されるのだ。現時点、強力な能力者には若者が多いこともあり、それぞれがこなす任務にはランクが定められており、解決内容にもまた評価が付けられるシステムとなっている。能力者たちは二人以上のチームを組んでおり、任務に挑む際にはそのチームであたる。今現在最高評価を得ているのは潤のチーム<リヴァイアサン>だ。レベル5の瞬間移動能力を持つ向井太陽と潤の二人で構成されるチームは抜群の機動力と高い対応力を誇るため、どんな任務もオールマイティにこなしてしまう。
 そんな潤の誘いに一つ返事で答えた梓もまた、相棒の雷市と二人で<ハウンド>という名のチームを組んでいる。念動力によって絶大な攻撃力を誇る梓の相方、轟雷市はレベル6の合成能力者で、これまた珍しい能力者であった。自身の身体を変化させ、動物の鋭い五感と鋼よりも硬い表皮を身に纏うことができる。戦地に向かっても傷一つなく敵国の部隊を壊滅させたという逸話を幾つも持つ彼女たちのチームは物騒な任務に巻き込まれることが多かった。それでも未だに成果をあげ続けているものだから、つい先日は国防省から表彰を受けたばかりだ。

「ああ、丁度合同で依頼されるもんね」
「そうなの?」
「それは知らなかったなあ、どんな内容なの?」

 パンケーキを口に放りこみながら波瑠が言った。潤と梓が目線を上げる。
 波瑠は<接触感応能力>の能力者だ。物質から記憶や感情を読み取り、紐解く能力に加えて簡単な予知までやってのける。

「なんかね、テロリストが来るって予知能力者が読んでるらしいよ。結構大勢能力者を引き連れて来るから、その防衛が任務だって」
「やだ、めっちゃ楽しい奴じゃん。最近人命救助ばっかりで飽きてたんだよねえ」
「雷市くんと暴れられるの久々だぁ! うふ、波瑠ちゃんそれっていつ?」
「今日の23時開催予定だから、20時には召集がかかると思う」

 まるでカレンダーに書かれた予定を読み上げるように波瑠は淡々と告げる。それを聞く二人もまた、遊びに行く予定を立てているかのように嬉々としているから、周りの客も彼女たちの会話を聞き流してしまう。

「今回は波瑠のとこも参加するの?」
「うん。殺人事件の案件ばっかりこなすのも気が滅入るし」
「二人元気? 最近研究科行ってないから会ってないんだよね」
「元気元気」

 戦闘向きの能力ではない波瑠は三人でチームを組んでいる。<パロットイズ>は彼女のほかにレベル3の風力操作と電力操作の能力者で構成されている。普段は技術者として働いている彼らはサポートに回ることが多いのだが、今回はどういう風の吹きまわしか表舞台に出てくるらしい。

「それでね、そのテロリストってのが、『ラビット・フット』って言うんだけど、知ってる?」
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