いやあ、滝夜叉丸ってば本当に美人。ナルシストでおしゃべりで面倒くさいけれど、本当、顔だけは素敵。あ、頭も良いんだっけ。実技も得意なんだ。そっかああと性格だけかあ…。残念だなー。私男選ぶとき性格重視なんだよなー。残念だなー。
縁側に腰掛けて滝夜叉丸の顔を見ていると、流石に視線に気づいたのか隣の滝夜叉丸が笑顔で私に向き直った。
「なんだ?そんなに私を見つめて…。やっと気づいたのか学年トップで容姿端麗、戦輪も得意なこの平滝夜叉丸の魅力に…」
「あ、ちょっと静かにして」
「なんだと?もう一度言おう。賢く美しくかつ戦輪の名手であるこの滝夜叉丸の魅力にようやく気づいたようだなああああっ!!」
「うるせえって!!」
「おいうるさいとはなんだうるさいとは!」
「黙って団子食ってろよ!その自慢もうかれこれ100回は聞いたわ!」
「まあ一日5回は言ってるからな」
「同じ人にな」
「それだけ言っても私の魅力は伝えきれないんだ」
「わかったわかった」
なんだかんだ言いながらも、私と滝夜叉丸は結構仲が良い。今だって、4年の長屋に遊びに来て、隣で団子食ってるくらいだもん。
日頃から自慢の過ぎる滝夜叉丸は、まあ友達が少ない。三木ヱ門とか、喜八郎とかタカ丸さんとは仲良くやってるみたいだけど、わざわざこいつの自分自慢を聞きにやってくる物好きなんて私くらいしかいないのだ。
「なんで私…滝夜叉丸と団子食ってるんだろ」
「愚問だな。この優秀な私が教えてやろうか」
「言ってみ」
「七詩、お前に友達がいないからだ」
「ぐっ…」
図星!
私と滝夜叉丸は友達いない同盟だったのだ…。くのいち教室では『イケメン狩りの二藍』とまであだ名がついている。違うの四年生男子がちょっと顔整ってるだけなの!仲良くしてたらイケメンハンターの名を欲しいがままにしていた。ハント、成功したこと無いですけどね。
だから私性格重視だって言ってんじゃん…。四年生みたいな個性の塊、自己中の集まりみたいな奴ら眼中にないっつーの!私の好みは優柔不断じゃない不破先輩だっつーの。
気付けば滝夜叉丸はまた自分自慢に突入していた。ぐだぐだーともう耳は完全に聞き流している。いやでもやっぱうるさいわ。
「滝夜叉丸、」
「なんだ」
「自分を自慢するつもりで私のこと褒めてみて」
「はあ?お前をか………」
滝夜叉丸は考え込んだ。まじで…。私は奴に詰め寄る。顔がなかなか至近距離になった。そこで滝夜叉丸は「甘いものが好きだよな!」と明るい声で言った。
「いやそれ褒めてないし。もっと美人だとかさ…実技が得意だとかさ…」
「私は嘘はつけん」
「なんだと!?」
ってことは本当に自分のことそう思ってるのか…。それはちょっと辛いなあ。滝夜叉丸と私の顔は近いままだ。眉間にシワをよせて考え込む滝夜叉丸を、暇だから眺めてみる。
うわー色白いなー。毛穴とか無いのかこいつ。鼻高いな。唇とか超柔らかそう。女子と口づけとかするんだろうなー。うわー。なんかちょっと近づいたら出来ちゃいそうだなー。滝夜叉丸まだ私の褒め言葉考えてるのかなー。ちょっと傷付くなー。
そんなことを考えていたら、なんだか唇に柔らかい物が触れた。
「…は」
「えっやべ、ごめ、…あれ、今わたしもしかして口…」
「お、おまっ…!いくら私が美しいからって、そ、そそれは無いだろ!?」
「ご、ごめ…なんか無意識で…!!」
私なにやってんの!?
滝夜叉丸の顔見てたら、なんだか唇をくっつけてしまっていた。超驚いた。
我に帰れば恥ずかしいことこの上ない。私は残った団子の包みを滝夜叉丸に押し付けて走り出した。恥ずかしくて忍たまの長屋なんかにいられない。帰る!
しかし、走り去る私の背中に、滝夜叉丸が声をかけた。
「七詩!」
「なに!」
「べ、別に私は…嫌じゃなかったからな!」
「…な、っ、うわぁああん!」
わ、私だって嫌じゃなかったわ!っていうか普通に良い匂いした…。びっくりした…。なんだよ!なんかときめいちゃったじゃん!おかしい!私性格悪い人好みじゃないのに!でも今考えたら滝夜叉丸って性格も悪くないんじゃないって思えちゃったり…。えっやだそれじゃあ完璧じゃん…完璧じゃん滝夜叉丸…。
何あれ、『嫌じゃなかった』って…。そんなこと言われたら、嬉しいじゃないのさあああっ!!!
「やだ…、明日から滝夜叉丸の顔見れない!」
<恋とはどんなものかしら>
2011
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