18年間生きてきて、こんなに緊張する日があっただろうか。
 目覚ましの鳴る1時間前に目が覚めた。シャワーを浴びて、誕生日プレゼントに貰ったいい香りのクリームを塗りたくる。まだ早すぎるだろうけれど、今度ちょっと大人っぽい下着を見に行こうと鏡の前で決意。
 髪を乾かして、昨日の夜から終わらないファッションショーの続きをする。
 いきなりミニスカートは狙ってるみたいで良くないらしい。タイトなスカートは大人っぽくて可愛いけれど、歩きにくくてもたもたしたら困ってしまう。ヒールの高い靴を履いて、不測の事態があったらどうしよう? それは考え過ぎかな。
 鏡に映る顔は見飽きてしまうくらい平凡だ。普段はリップクリームだけだけど、今日はちょっと大人ぶって口紅を塗っちゃおうか。睫毛もあげちゃおう。
 そうこうしているうちに時間は過ぎていく。
 下ろしたての膝丈のワンピースに、色のついた唇は鮮やかで、自分じゃないみたいだ。気合を入れすぎていると思われたらいやだな。わたしはティッシュで口を拭ってから靴を履いた。踵の高すぎないパンプスだから、おばあちゃんだって背負って走れるよ。
 今日は土曜日、学校は休み。ボランティア活動もなし、ファットガム事務所へのお手伝いも、なし。
 ふん、とわたしは玄関で鼻を鳴らす。
「お、もう行くのか」
 朝から騒がしいわたしの行動を見ていた両親がわざわざ玄関まで見送りにきてくれた。
「すくい、ちゃんと夜までに帰ってきてよ」
「遅くなんないよ、心配しないで」
 お母さんは心配性だなあ。でもまあ、わたしは高校に入学してから何度も入院騒ぎを起こしているから、親としてはどうしても心配なのだろう。
 行ってくるね、とドアノブに手を掛けると、お父さんがにまりと微笑んで言った。
「環くんによろしくな」
「………友達と遊びに行くって言ったじゃん!!」



 デートの場所に選んだのは近場のショッピングモールだ。待ち合わせの時間よりも15分早く到着したというのに、既に環くんは待っていた。
「ごめん! お待たせしちゃった」
「いや、待ってない。丁度来たところ、だから」
 環くんは視線を一度こちらに向けて、それからすぐ足元に向けた。口の中でもごもごと何かを言ったけれど、わたしはそれを聞きとれなかった。聞き流せば良いのに、テンションが高いわたしは彼に近づいて出まかせを口にする。
「なになに、かわいいって?」
「………。あ、…っ、…」
 こういうとき、すぐ調子に乗ってしまう癖を治したい。ふざけてウインクしてみれば、すぐ目を背けた環くんは口元を手で覆ってこくりと頷くではないか。
「えっ! 環くんもかっこいいよ! なんちゃってー……」
 やめておきゃ良かった。自分で言ったくせに物凄く照れてしまった。
 お互い顔を押さえて自分たちの行動に照れる高校生。自分たちのことながら物凄く初々しい反応をしている。
「移動しようか……」
「う、うん!」
 予定よりも少しだけ早く、わたしたちの初デートは始まった。
 ……初デート。
 そう、わたしは先月から天喰環氏とお付き合いさせていただいている。
 付き合うと言っても、わたしたちは高校三年生。しかも雄英高校ヒーロー科の最高学年ということで、ゆっくり二人で過ごす時間など殆ど無かった。折角晴れて恋人同士になったというのに、クラスも違うのでお昼も別だし、環くんはインターンで大阪まで行かなくてはならないので、放課後一緒に帰るのも難しかった。無理矢理環くんのクラスに押しかけることもできるのだけど、悪目立ちは彼の一番嫌うところだし、わたしとしても押しかけ女として目立つのは本意では無かったから、涙を飲んで我慢していたのだ。
 そして先週、ついに週末に出かける約束を取り付けたわけである。
「今日はわたしがエスコートするからね! 環くんは大船にのったつもりで着いてきて」
 このデートはわたしが漕ぎつけた約束なので、わたしにプロデュースさせてほしいと頼み込んだ。環くんは少し目を泳がせたあと申し訳なさそうに頷いた。きっとわたしが主体でデートプランを考えることに気が引けてしまったのだろう。わたしは環くんと出かけられるだけで楽しいから構わないのに。
 ショッピングモールをうろついて、その中のカフェでご飯を食べて、映画を観て、解散。まとめサイトを延々見た割になんの捻りもないプランになってしまったけれど、初デートの時間は長すぎると良くないと書いていた。ちょっと物足りないくらいが次への布石になるらしい。

 わたしは軽い話を振りながら環くんの手を掴む計画を立てていた。イメージとしてはそっと指先を絡ませて、そこから環くんがわたしの意図に気づいて手をそっと握ってくる……。
 という感じだったのだけれど、あまりにも急に掴もうとしたものだから、環くんが咄嗟に手を引っ込めてしまった。この勘の鋭さ、さすがビッグ3だ。
「な、何……?」
 まるでヴィランから攻撃されたかのように身を固める環くんに、わたしは弁明する。
「攻撃じゃないよ。手を繋ごうかなって思って失敗したの……」
 ああ、と環くんが合点がいったという顔をして、それからがくりと肩を落とした。
「ごめん。そうだよな、で、でで、デート、だから、そういう……。またすくいさんに恥をかかせてしまった……」
「ううん! デートの恥はかき捨てのつもりでいるから大丈夫。気を取り直してお手を拝借!」
 一本締めみたいだな、と環くんが笑って、差し出したわたしの手を取った。
 わたしの手は個性を使用するから普通の女の子より少し大きいのだけれど、環くんの手はもっと大きくてそれから皮膚が固くなっていた。頑張っているなあと思うのが半分。冷たい手のイメージがあったのに、彼の手は温かくて湿っているから、照れてしまうのが、半分。
 知り合いに会いませんように、と祈りながらも男の子と手を繋いで歩いている自分があまりにも新鮮でずっと頬が熱い。俯きがちの環くんなんて耳まで赤い。
「ここがね、ランチ美味しいんだって。ボリュームもあって食いしん坊も大満足らしいよ。食べログ情報ね」
 お目当てのカフェの前で、手を離す。ランチのパスタセットが美味しいと評判のお店をちゃんと調べていたのだ。
 お昼時の店内は混みあっていて、案内された窓際の席で、少しだけ背伸びをしてメニューを開いた。環くんは周りのお客さんを見回して、小さな声で言った。
「……すくいさんは、こういうお店良く来るの」
「うん。休日友達とケーキ食べに来たりするよ。男子ってあんまり行かない?」
 はい、お洒落なお店に行き慣れているフリ。
 普段友達と来るのはサーティーアイスクリームかミセスドーナツだ。匙測と外で会いたかったらその二件を探せば大体どちらかにはいると言われているくらい行っている。
 そんなわたしの小さな嘘に、環くんは騙されてくれたようだった。
「そうだな、大体ファミレスとか、フードコートで食べてる」
「あはは、そんな感じだ。二人とも良く食べるもんね。ってミリオと二人の前提」
「間違いじゃない。たまに波動さんも来るんだけど、やっぱりすくいさんと同じこと言ってたよ」
 環くんの口からねじれちゃんの名前が出ると、わたしは少しだけ意識してしまう。
 雄英ビッグ3と呼ばれている彼等の絆は強く、わたしはそこに立ち入れない。なぜなら戦闘能力では遠く遠く彼等には及ばないからだ。バスジャック事件でも大怪我を負ったように、わたしは基本的にスプーンで相手をぶん殴るという戦闘手段しか持っていない。“個性”でビルを倒壊させるねじれちゃんやどんな敵相手にも傷を負わないミリオ、生き物の特徴を身体に再現できる環くんたちには逆立ちしても叶わない。だから、彼等が羨ましい。
「今度」
 環くんが口を開いた。わたしは顔を上げて彼を見つめる。
「え?」
「その、教えてもらった店があるから、すくいさんと、行きたいと思って。いや、良かったら、なんだけど……」
 わたしは心の中でくだらない嫉妬や劣等感を抱いた自分に往復ビンタを食らわせる。こんな素敵な人が自分の恋人で、わたしのことを考えてくれているのに、わたしはなんで自分から距離を置こうとしてるんだ。
「うれしい! 絶対いこう」
 食い気味に返せば環くんは「次の週末かな」と笑った。わたしは嬉しい。彼の予定の中に自分が組み入れられていることが、とてもうれしい。
 出てきた料理は前調べの通り美味しかった。普段ならぺろりと食べられる量だったのに、生まれて初めて胸がいっぱいでフォークが進まない事態を味わった。でも全部食べた。
 ランチセットはパスタとサラダとスープに、さらにデザートまで付いた贅沢仕様であった。普段はファストフード店でポテトを貪っている女子高校生なので、ちょっと大人になった気分だ。調子に乗ってナイフとフォークが沢山出てくるようなお店にしなくて良かった。つまみだされていたかもしれない。
 デザートに運ばれて来たミルフィーユをどうやって上手く食べようか頭を悩ませていると、環くんが気づいたようにわたしの皿に自分のいちごを乗せてきた。
「はい」
「あれ、いちご食べないの。最後の楽しみにしない?」
「前もそう言ってたから、あげるよ」
 幸せすぎてデートの序盤だというのにリタイアしそうだ。
 前っていつだろう。わたしはぼんやり生きているから、自分がいつそんな発言をしたのかを覚えていなかった。いつだっけ、と聞けば環くんはふいと顔を背けた。
「別に、一言一句きみの言葉を覚えている訳じゃないから……、気持ち悪がらないでほしい」
 ばつの悪そうな顔の環くんは、さっきからわたしを喜ばせっぱなしだ。気持ち悪いだなんて思うわけがない。わたしの他愛もない発言を覚えてくれているなんて、うれしいことこの上ないというのに。お陰で、せっかくのデザートはほとんど味を覚えていない。



 ランチを食べ終わったあとは、デートの定番で映画を観ようと提案した。環くんに観たい映画があるかどうか聞いたら、彼はひととおり上映作品を眺めた後にわたしの意見を仰いだ。
「すくいさんが観たいやつにしよう」
「いいの? じゃあ、これ」
 わたしは環くんの優しさに甘えて、観たかったアニメ映画を指差した。未来からやってくる猫型ロボットが出てくるアニメは当然、小さい子向けなのだけれど、わたしはこのアニメが大好きだった。
「いいよ。観たいのかなって思ってたんだ。時間も丁度だし」
「やった。今度は環くんが観たい映画に付き合うね。わたし、ホラーでもちょっとエッチなやつでも平気だからなんだって遠慮せずに声かけて!」
 わたしたちは食べたばかりだというのにポップコーンを抱えて席に座る。どうして映画館のポップコーンってこんなに量が多いんだろう。予告まではむしゃむしゃ手が進むのに、映画が始まってからは画面に集中しすぎてポップコーンは環くんに押し付けてしまっていた。彼は一瞬嫌な顔をしたけれど黙ってむしゃむしゃやっていた。
 映画は最高だった。わたしは画面の向こうのふたりの友情に感動しておんおん泣いていたというのに、隣で環くんはわたしの泣きっぷりを見てちょっと引いていた。
「すっごい、よかった……。ね、良かったよね……、最後闇のマントが……」
「泣きすぎだ。確かに面白かったけれど、そんなに泣きどころかあったかな」
 映画が終わって明るくなると、環くんがポケットティッシュを差し出してくれた。やさしい。
「ラストシーンでのび太が友達のために足を止めるシーンでやられた……。しずかちゃんが危険を省みず戻ってくるところもわたしの涙腺をバカにしちゃったわけ……」
 鼻をかむわたしより先に立ちあがった環くんはトレイを持ってくれた。
 映画館の廊下を歩きながら、わたしたちはたまらず感想を話す。まだ見ていない子たちに配慮して、できるだけ小さな声で。
 すると環くんが思い出したように言った。
「……すくいさんはあのヒロインに似てると思う」
「わたし、しずかちゃんに似てる? のび太じゃなくて?」
「のび太は俺だよ」
 無理に付き合わせたと思っていたから、彼が映画の話題を自分から振ってきたのには少し驚いた。主人公は勉強も運動も苦手で、泣き虫で、やさしい男の子。そんな主人公と環くんを重ねたことは一度としてなかったから、わたしは彼の続きを待つ。
「それで、ドラえもんがミリオ」
 ふふ、と環くんが笑った。彼の親友は未来から来たロボットの役を割り振られたと知ったら目を見開いて驚くだろう。そして、彼はきっとこう言うのだ。
「ミリオが当てた配役は逆なんじゃない?」
 環くんは驚いてわたしの顔を見た。
「なんでわかったんだ」
「そう言いそうだから。親友同士って感じ」
 すくいさんには全部見透かされているんだな、と環くんが言った。今日の環くんはご機嫌で、少しだけ目を細めた顔はとても優しい。



 楽しい時間はあっという間で、映画館から出たところでわたしの立てたデートプランはすべて終わってしまった。
 時計の針は5時を指している。物足りないくらいが良いと言ったけれど、これじゃあ本当に物足りない。
 もう、あの角を曲がれば家だ。家の前まで送ってもらうのは恥ずかしくてここでいいよ、と言った。
「今日はありがとうね」
「こちらこそ……。俺が相手でつまらなくは無かったかな。いや、言わなくてもいい……、もっと気の利いたことができたら良かったんだ……」
「待って待って。つまらなかったらそれは今日のすくいプランが駄目だったんだよ。わたしは大満足だよ。環くんは?」
「……楽しかった」
「よかった! また行こうね」
「すくいさん、これ」
 別れ際、環くんが鞄から紙袋を出した。
「え、なあに」
「すくいプランのお礼。本当に大したものじゃないから、いらなかったら捨ててくれて構わない」
「え!」
 あけていい?と聞けば環くんは頷いた。早速開いて見てみると、リボンのついた小さな袋に入っていたのは、2つの指輪だった。銀色の装飾にステンドグラスのように色とりどりの硝子が入っていてとても綺麗だ。
「わ、わたしこんな、もらえないよ。何にも準備してないのに……」
「計画、立ててくれただろ。俺はそういうの、提案したりするのが苦手だから……。嬉しかったんだ。全然高いものじゃないし、土産みたいなものだから」
「こんなんで良かったら毎回すくいプラン立てちゃうよ! ありがとう……」
 小指と薬指に指輪を嵌めた手を顔の前で揺らせば、わたしはあることに気が付いた。
 わたしの指には一度千切れた指を縫い付けた痕が残っている。もらった指輪を嵌めると、金属の部分に覆われて、その痕が見えなくなるのだ。
 指の隙間から見えた環くんはわたしが説明を求める前に口を開いた。
「…………本当は、快気祝いのつもりで調子に乗って買ったんだ。けど、付き合ってもいない男から指輪なんか贈られたら怖すぎると気づいて……。捨てようと思ったが、決断しきれなかった。本当に、趣味じゃなかったら、捨ててくれ……」 
「環くん、もしかして、結構前からわたしのこと好きだった?」
 わたしは唇を噛みしめて彼の話を聞いていたけれど、耐えきれずに口を開いてしまう。
 だって、快気祝いって。わたしがバスジャック事件で入院していたのはもう3ヶ月も前の話だ。その頃に既にわたしのことを考えて、わざわざ買ってくれたって。そんな。
「………ノーコメントで」
 環くんは顔を両手で覆ってしまった。けれども耳の先まで赤い。
「まあわたしはお茶出してもらった時から、こやつは一味違うなと思ってたけどね」
「それは流石に嘘だろ」
「えへへ。ねえねえちょっと屈んで」
 わたしは環くんの肩を掴んで自分の顔と同じくらいまで屈んでもらう。環くんは背が高いのに酷い猫背だから、わたしが背伸びをすればなんとかなりそうな気もするのだけれど、タイミングが難しそうだった。
「屈む?」
「うん」
 不審に思った環くんが顔を覆っていた手を離す。
(うわ、かっこいい……)
 ばちりと目が合ってしまって、お互い顔を逸らしてしまう。環くんの顔を至近距離で見る機会なんて中々無いから、物凄く照れる。今からなにをするつもりだったのか、気づかれてしまっただろうか。
 今日のすくいプラン、最後には、キスまでできたらいいなあなんて計画だった。
 勿論急がなくてもいいと思うし、それなりのタイミングとか、あると思う。でも、また学校が始まれば忙しくなるし、受験勉強もみんな始めている。そう考えたら、ちょっと駆け足になってもいいかな、なんて。わたしやっぱりせっかちなのかな。女の子のほうがガツガツいくのって、いやらしいかな。嫌われちゃうかな。
 わたしは環くんの肩に手を乗せたまま、暫く葛藤して、それでもこれ以上彼の顔に近づく勇気が出なくて、手を離す。
「……、……っ、だ、だめ……。ま、また今度!」
 当たり前だけど顔が近すぎる!

「すくいさん」
 後ろに引こうと思った矢先、環くんがわたしの名前を呼んだ。それから屈んでいた背を伸ばして、わたしの頬に触れた。今日の彼の手は、やっぱり温かい。
「え」
 口に、柔らかいものが触れた。
 一瞬のことだった、気がする。でも柔らかいものが唇に触れた感触だけは残っている。
 環くんの顔が近い。先程が一番近かったのか、ゆっくりと遠ざかっていって、最後に頬に添えられていた手が離れていった。真っ赤な顔の環くんが口元を押さえている。
「………っ。また今度」
 そう言って背中を向けた環くんは、走りだしてしまった。
「た、環くん……!」
 追いかけようにも、足が動かない。小さくなっていく環くんを最後まで見つめていられなくて、わたしはそのまま屈みこむ。
 環くん、ずるい……。
 彼は、小心者と言われているけれど、すごく要領がいい。取り掛かりに時間がかかるし、緊張に弱いけれど、手を付け始めれば大体器用にこなすのだ。あの個性の使い方や有事の動きを見れば誰だって只者じゃないことがわかる。ただの臆病者が雄英高校のトップに上り詰められるわけがない。
 今日の振る舞いを思い返せば、彼は常に車道側を歩いてくれていたし、階段を上る時は半歩後ろにいた。最後だって、わたしが何をしたいのかをわかって動いてくれたのだろう。思い返せば返すほど、胸が苦しくなる。
(わ、わたし、ものすごく大事にしてもらってる……)
 自分が彼のことを好いている、というのはわかる。自分のことだから。だけど、環くんがわたしのことを好きかどうかなんてのはわからない。そこは互いを信じるしかないのだ。
 好きになったのも、告白したのもわたしからだったから、好かれているのかどうかは正直自信が無かった。断れなくて、オーケーしてしまったのかとも思っていた。
 けれど、こんなの、どう考えたってーーー。
(好きな人に、好きになってもらうのって、こんなうれしいんだ……)
 頬に残った熱が消えない。家の扉を開けるのはもう少し先になりそうだ。


<アマンディーヌの誘惑>


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