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「な、なんだとぉ!
元はといえば、悪いのはおまえじゃねぇか!
それを逆恨みしやがって!」
エルフに詰め寄った時、俺はまた自分の異変に気付いた。
俺の視界に映るのは、エルフの胸。
確かにこいつは背が高かったが、俺もどっちかというと高い方だ。
だから、それほど差はなかった筈なのに、今、こいつの顔を見ようと思ったら、顎を上に向けなくてはならない。
それに、ズボンや袖が妙に長いことに俺は気が付いた。
つまり、それは……
「畜生!
身長まで小さくしやがったな!」
「今のおまえは女性なのだから、あまり大きくない方が良いだろう?
どうしてもと言うのなら、伸ばしてやらないこともないが…」
「ふざけてんじゃねぇ!
早く俺を元の身体に戻せ!」
「だめだな…
さっき話した通り、アレクシアはとても大切な者だ。
それを逃がしてしまったのだから、おまえが罰を受けるのは当然のことだ。
……だが、おまえは本当に運が良い。
考えてもみろ…私のような温厚で慈悲深いエルフばかりではないのだぞ。
下手をすれば、その場で八つ裂きにされていたかもしれないし、小さな虫に変えられて今頃は鳥の餌になってたかもしれんのだぞ。」
(こ…こいつ……
なんて物騒なことを言いやがるんだ…)
俺は、全身をばらばらにされた自分を…そして、もぞもぞと木を這う虫にされ、鋭い鳥の嘴で捕らえられる様を想像して身震いした。
確かに、そんな風にされることを思えば、まだマシだ。
俺はこの通り、いつもと同じように元気で、どこも具合の悪い所はない。
だが、そこで、俺の頭にはふとした疑問が浮かび上がった。
このエルフは、アレクシアを逃がされたことで、相当、頭に来てる筈なのに、なんだって俺を女に変えたんだ?
なぜ、一思いに殺っちまわなかった?
とてもじゃないが、本人が言うように「温厚で慈悲深い」なんて思えないが、他のエルフに比べたら本当にそうなのか?
「……あの…ちょっと聞きたいんだけど…」
「なんだ?」
「……なんで、俺をこんな風にした?
俺のことが相当頭に来たんだろ?
なんで、虫とかカエルにしなかった?」
俺が率直にそう質問すると、エルフは意味ありげな笑みを浮かべた。
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