「ん……んんんっ!?」

魔女は突然ユリウスの方に近付き、背伸びをしてユリウスのことをじっと見ている。



「あ、あの…婆さん…」

「誰が婆さんじゃ!サンドラと呼べ!」

「す、すみません。
サンドラさん…あの、こいつに何か…?」

「……とりあえず、中で話を聞こう。
さぁ、入るがええ。」

魔女の家に入るのはあまり気が進まなかったが、とりあえず、アレクシスのことを聞かなくてはならない。
だから、仕方なく俺達は魔女の家に入った。



(うわぁ…)



薄暗い部屋の中は、何とも言えない不思議なにおいが漂っていた。
俺達は、居間のような部屋の中に通された。
人間の家とあまり変わりはないごく普通の居間だ。



「そこに座るがええ。」

「あ、ありがとうございます。」

俺達は言われた通りに、長椅子に腰掛けた。
すると、婆さんは、俺達を残してどこかへ行ってしまった。



「おい、大丈夫なのか?
魔女の家なんかに上がり込んで…」

ユリウスが小さな声で囁いた。



「仕方ないだろ?上がらなきゃ、アレクシスの事が聞けないんだから。」

俺がそう言うと、ユリウスはいかにも不満げに眉間に皺を寄せた。
本当に苛々するな…
でも、今はそんなことを言ってる時じゃない。
とりあえず、魔女におかしなことをされないように気を付けないと…



そんなことを考えていると、意外にも魔女がお茶の用意をして持って来てくれた。



「さぁ、お飲み。」

「あ、ありがとうございます。」

俺がカップに手を伸ばそうとすると、ユリウスが俺の手を取り鋭い目でにらんだ。



「なんじゃ?魔女が出した茶は飲めないと言うのか?」

今度は婆さんが睨み付ける。
これはまずい状況だ。
確かに、魔女の出してくれたものには何が入ってるかわからないけど、魔女を怒らせるのも良くない。
どうすりゃ良いんだ!?



「い、いただきます!」

ええい、ままよ!とばかりに、俺は魔女の出してくれたお茶に口を付けた。
とても渋くて、うまいとは言えないものだったが、とりあえず、俺は無事だ。
苦しむことも死ぬこともなけりゃあ、カエルに変わることもない。



「あんたは飲まんのか?」

「え……」

「あ、あの、こいつはすごい猫舌で…なっ!」

魔女に背を向けて、俺は片目を瞑ってユリウスに合図を送った。


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