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「鍵って……どういうことなんだ?
もう少しわかりやすく教えてくれないか。」
エルフは小さく肩をすくめ、そして、おもむろに近くの岩の上に腰を降ろした。
「おまえは、エルフの住む場所がどこにあるか、知っているか?」
「……え…?
そりゃあ……まぁ、山とか森ん中じゃないのか?」
エルフは俺の答えにうすら笑いを浮かべながら、ゆっくりと首を振る。
「そうではない。
わかりやすく言うとだな…次元の違う場所にあるのだ。
遥か昔には、ここに住むエルフ達もいた。
人間が好きだという変わった者達だ。
しかし…そういう者のほとんどは人間によって滅ぼされた。
自分達の欲のために…」
「欲…?」
「そうだ…
最初はエルフの持つ能力や技術に頼るだけだった。
そんなことなら何の問題もない。
しかし、いつしかそれらを悪用するもの…挙句には、エルフを傷付けたり殺す者までが現れた。」
「な、なんだって!?
えらく物騒な話じゃないか!
一体、なんでそんなことに…」
エルフの言葉は衝撃的なものだった。
エルフにそんなことがあったなんて、俺は今まで聞いたことがない。
それどころか、エルフの存在すら信じちゃいなかったんだから。
「……エルフはほとんど老いることはなく、さらに、人間とは比べものにならない程、寿命が長い。
だから、エルフを解剖してその秘密を解明しようとする者や、エルフの血や心臓を食すればエルフと同じように長く生きられると信じられたのだ。」
「そ…そんなことが…!」
「……もちろん、血を飲もうが心臓を食らおうが、人間が我々と同じ身体になるわけはない。
愚かな話だ。
……とにかく、そんないきさつもあって、そういう野蛮な人間の世界には何か特別な理由がなければ行くことは出来なくなった。
門には特別な結界が張ってあってな。
それを破れる者はごく限られた者だけなのだ。」
「……なるほど。
確かに、欲の深い人間ってのはいつの時代にもいるからな。
……ってことは、おまえはこっちに何か特別な用があったってことなのか!?」
「そ、それはだなぁ…」
俺が、そう訊ねると、常に落ち着き払っていた印象だったエルフが急に焦った様子を見せた。
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