VS. army of demons Z
鬼道たちが魔界軍団Zと戦っている一方、無事にリカを助け出した円堂たちは山を下り、ようやく麓の分かれ道に戻ってきていた。
上がった息を整えて、円堂は地下へと続く道を見下ろしごくりと唾を飲む。
「この先だな、デモンズゲートってのは……!」
「はい、そうッス……! 何か、不気味な空ッス……鬼道さんたち、大丈夫ッスかね?」
暗雲立ち込める空を見上げた壁山が心配そうに尋ねる。それに当たり前だろ、と力強く返し、円堂は先陣を切ってデモンズゲートへ続く道へ足を踏み入れた。
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「──後半戦開始じゃ!」
老人のホイッスルと共に砂時計が回る。ハーフタイム中、結局魔界軍団Zを倒すこれと言った策は浮かばなかった。
今出来ることと言えば、これ以上点を取られないようにディフェンスを徹底することだけだ。
「みんな、ディフェンスラインを固めろ!」
「おう!」
鬼道の号令で選手たちは後方へ下がる。
しかし魔界軍団Zはそんなことはお構いなしに、強引なプレーでイナズマジャパンを蹂躙していく。何せこれは公式な試合でもなんでもなく、彼らにとっては戦闘の1つなのだ。
「クハハ……もうすぐだ。もうすぐ我らの魔王が復活する……!」
「く……!」
「鬼道、もう時間がないぞ!」
砂時計を見上げ、歯噛みする鬼道に佐久間が焦った様子で声を上げる。
「分かっている! 分かっているが……!」
辺りを見回すと、仲間が疲労と痛みに体をよろめかせている。特に前半で目を付けられたらしい不動と飛鷹と綱海、そしてデスタのシュートを受けた立向居のダメージは目に見えて大きい。
「……この状態では、守りに徹するしかない……!」
「鬼道……!」
二進も三進もいかない状況に、鬼道は苦しげに拳を握り締める。
──そんな彼を見て、顔を見合わせた海外組は言葉もなく小さく頷き合った。
「つまらない戦いね……!」
一方的な展開に飽きたらしく毒吐きながら切り込んでくるアラクネスに、鬼道はその進路に飛び出していく。
「止める……!」
「デビル──ボール!!」
アラクネスが蹴ったボールに蝙蝠のような翼が生え、旋回するボールは鬼道を翻弄する。背後に回り彼を抜き去ったアラクネスはそのままゴールへの距離を縮めた。
「終わりにしましょう、デスタ!」
「ああ!」
デスタにボールが回るのを見て、ゴールポストに体を預けてどうにか立っていた立向居は無理矢理体勢を整える。
「何としても、止める……!」
「喰らえ──ダーク、マター!!」
「立向居くん!」迫るシュートに春奈の悲鳴が上がる。立向居はぐっと歯を食い縛り、来たる衝撃を今度こそ受け止めるべく身構えた。
そんな彼の目の前に、打ち出されたシュートから庇うように突如人影が飛び出してくる。
「アイアン……ウォール!!」
テレスだ。突然目の前に展開された鉄の壁に、受け身を取る暇もなく激突したデスタはそのまま後方に吹き飛んでいく。
「っ何ィ!?」
「デスタが倒された……!?」
これは魔界軍団Zたちも予想外だったのか、地面に転がるデスタを見て瞠目する。テレスはボールを押さえると、険しい顔で鬼道を振り仰いだ。
「守っていても勝てんぞ、鬼道!」
「テレス……!」
鬼道は頬を叩かれたような気分でテレスを見つめ返す。しかし彼らが言葉を交わす前に、激昂したサタナトスがテレスに突っ込んできた。
「貴様ぁ! ゴー・トゥ・ヘル!!」
「ぐぬっ──効かん!!」
しかし、咆哮を上げたテレスはあろうことか気合でサタナトスの必殺技を封殺する。
サタナトスを弾き飛ばしたテレスは、改めて鬼道へ向かって声を上げた。
「鬼道! お前は焦って集中力を欠いている! だが、ピンチの時こそ攻めることを忘れるな!!」
テレスは瞼を伏せ、かつてのイナズマジャパンとの戦いを思い起こす。そこに鬼道はいなかったが、あの時戦った選手たちはいつも彼を司令塔として戦っていた記憶を頼りに奮戦していたはずだ。
「攻撃こそ最大の防御──それを教えてくれたのは、アンデスのアリ地獄を破ったお前たち、イナズマジャパンじゃねーか!!」
「……!」
かつてジ・エンパイアと戦った豪炎寺たちは驚いたように顔を見合わせて目を瞬く。あの日の戦いは結局負けてしまったが、テレスたちに大きな影響を与えていたのだ。
「俺は決勝トーナメントでのイナズマジャパンの戦いを楽しみにしてるんだ。お前たちもそうだろう!?」
そう言ってテレスがマークとディランに同意を求めると、2人は笑顔で頷く。
「勿論さ。こんなところで負けてもらっては困る!」
「カズヤもきっと、同じ気持ちさ!」
「ディラン、マーク……」
不安と焦りでぐらついていた鬼道の心が、少しずつ落ち着いていく。マークは鬼道に目をやり、諭すようにこう言った。
「キドウ。君は優れたプレイヤーであり、イナズマジャパンは良いチームだ。だが、チームプレイに拘り過ぎてサッカーが小さくなっている」
マークの鋭い指摘に、鬼道は意表を突かれた思いで目を見開いた。彼の言う通り、鬼道はほとんど無意識の内ではあったが、個人技に頼る試合運びを避けてここまで来たのだ。
それはチームワークで頂点に上り詰めた雷門のサッカーの影響でもあり、かつて個人に頼り過ぎて選手を追い詰めてしまった苦い思い出のせいでもあった。
「圧倒的な個人技が、チームの局面を変えることもある!」
「Yes.フィールドの魔術師、カズヤが魅せたようにね!」
ぱちんとウインクをして──アイガードでよく見えないが──ディランが笑う。一之瀬を主体として戦ってきたユニコーンの選手たちの言葉には説得力があった。
言いたいことは言い終えたのか、3人は顔を見合わせ口角を上げる。
「やるかい!?」
「良いだろう!」
頷き、テレスはズン、と勢い良くボールに足を置き直した。
「相手は魔王の手下……不足はないぜ。アルゼンチンとアメリカが手を組む時が来るとはなぁ……!」
「南アメリカと北アメリカ、夢の共演だね」
「Yes! 全米が泣くネ!」
軽口を叩き合い、3人はデスタたちを見据える。起き上がったデスタは、彼らの纏う空気が変化したのを察して目を細めた。
「──行くぞッ!」
「Let‘s party!!」
ディランがご機嫌に指を鳴らすと、テレスがドリブルで勢い良く敵陣へ突っ込んで行く。
デスタのシュートを止めたことで敵意を煽られた魔界軍団Zは、4人掛かりでテレスを止めに掛かった。
「よくもデスタを……!」
「ふん……! 奪えるもんなら奪ってみな!」
テレスはその圧に負けず、果敢にボールを守り続ける。ジ・エンパイア戦では落ち着いて観察する暇もなかったテレスのディフェンスは、やはり目を見張るものがあった。
「たった1人で4人を相手にしてやがる!」
「足だけじゃない──全身を使ったディフェンス……!」
アルゼンチン戦の時には高い壁だったテレスのプレーは、今だけはチームの心強い防壁になる。同じDFとして、綱海や飛鷹はその圧倒的なプレーに大きく心を動かされた。
「──マーク!」
やがて4人のディフェンスを振り切ったテレスからボールがマークへと渡る。
パスを受けたマークは次々に敵のディフェンスを突破したが、跳躍したところへベリアルのチャージを空中で受け、体勢を崩し地面に落下してしまう。
「っまだまだ!」
けれど痛みに顔をしかめながらも彼はすぐに立ち上がり、即座にディランへ向けてボールを蹴り出した。
「ナイスパス、マーク!」
テレスやマークによって引き付けられた魔界軍団Zは、ディランの進軍を阻むには間に合わない。ディランはそのままがら空きになったフィールドを颯爽と切り込んでいく。
「抜いた……あのディフェンスラインを!」
「FWまでボールを繋ぎやがった。たった1人でよ……!」
鬼道と不動はほとんど同時にそう口にして、ちらりと視線を交わした。きっと考えていることは同じだろう。
向かってくるディランに目を細め、キーパーのアスタロスは悠々と身構える。
「決めるぜ、baby! これでも喰らいな、必殺の──!」
「止める……!」
脚を振りかぶったディランのシュートコースを予測し、アスタロスは瞬時に体をそちらへ投げ出した。
しかしディランは次の瞬間ニヤッと笑うと、脚を緩め優しくボールにタッチする。
予想に反し打ち出されたループシュートにアスタロスも反応が間に合わず、ボールはぽこんとゴールに吸い込まれた。
岩壁に反響し、鳴り響くホイッスルに虎丸はポカンと開いた口が塞がらない。
「決めた……必殺技を使わずに……!?」
「どんな形であれゴールを決める。それがFWの役目だからな」
当たり前のように答えるテレスに、虎丸は豪炎寺と顔を見合わせた。
「DF、MF、FW……たった3人でゴールを決めたって言うのか……」
「これが、世界トップレベルの個人技……!」
一連のプレーを見つめ、不動や佐久間は呆然と呟く。
彼らと味方として共に戦うことで今まで見えなかったものが、自分たちに足りなかったものの輪郭がハッキリと見えたような気がした。
ホイッスルで試合が再開され、点を奪われたことで魔界軍団Zの敵意は最高潮に達する。
「人間風情が図に乗りおって……! くたばり損ないがァ!!」
咆哮と共にドリブルで切り込んできたサタナトスの進路に飛び出したのは飛鷹だ。
「──真空魔ッ!!」
「何!?」
既に抵抗する気力は削いだものとばかり思っていた飛鷹から繰り出された必殺技は、強烈な威力でサタナトスからボールを奪っていく。唖然とするサタナトスを追い越しながら、飛鷹はふっと笑みを漏らした。
「テレスのプレーを見て、火がついちまったぜ……! 綱海!」
パスを受けた綱海へチェックへ入るのはアラクネスだ。濃いルージュを引いた唇を舐め、またおねんねさせてあげる、と彼女は綱海に猛進していく。
「俺たちも負けてらんないぜ──決勝トーナメントを勝ち上がる為にも!!」
けれど彼女の予想に反し、口角を上げた綱海は先程までのプレーが嘘のようにあっという間にアラクネスを突破した。
ボールはそのまま綱海から不動へ。パスを受け止めて走り出す不動に、追走してきたグラーシャが突進してくる。
「吹っ飛べェ!!」
「くっ……!」
小柄な体から繰り出されたとは思えない強力で執拗なタックルを受けた不動の顔が、苛立ちと痛みに歪む。だが、彼は負けじそれに応戦した。
「ってめえら全員、蹴散らしてやるぜ!!」
「ぐわぁッ!?」
グラーシャのタックルを気勢と共に跳ね返した不動は、虎丸に視線を送り顎で小さく指図する。
「──虎丸!」
「! ……はい、不動さん!」
虎丸がパスを受けたのを確認し、彼に並走するのは豪炎寺とディランだ。
「虎丸!」
「ミーが決めるネ!」
虎丸に向かって声を掛ける豪炎寺とディランに、アスタロスは一笑して身構える。
「ふ──どちらが来ても同じことを!」
「豪炎寺さん!」
アスタロスは虎丸が豪炎寺に声を掛けたのを見てそちらに体を向ける。しかしその瞬間、彼は虎丸の頬に悪戯が成功した子供の笑みが浮かぶのを見た。
「行っくぞ──グラディウスアーーチ!!」
刹那、放たれた7本の剣がアスタロスの脇をすり抜けて行く。
不意を突いたシュートはゴールを貫いて、イナズマジャパンの2点目が決まった。
「馬鹿な……!?」
2対2に切り替わるスコアボードを見上げ、アスタの表情に初めて動揺が浮かぶ。
対し、互いのプレーを称え合うイナズマジャパンの顔には先程と一転し壮快な笑みが浮かんでいた。
「テレスたちのプレーが流れを──チームの意識を変えた」
「あとは俺たちが決めるだけだな。鬼道」
深く、染み入るように呟く鬼道に佐久間が声を掛ける。
ああ、と頷く鬼道の目からも既に焦りは消え、気迫が戻っていた。
砂時計に残る砂はあと僅かだ。デスタたちにも同点に追いつかれたことで焦りと苛立ちが見え始める。
「人間どもがここまで粘るとは……」
「魔王復活は目前なんだ。邪魔はさせねえ!」
恐らくこれが最後の試合再開になるだろうホイッスルが鳴り響き、デスタはボールを受けとるなり声を張り上げた。
「ブラックサンダー!!」
その瞬間黒い雷が降り注ぎ、デスタは動けなくなったイナズマジャパンたちの横を悠々とすり抜けてゴールまで駆け抜けて行く。
先程と同じようにボールを軽く打ち上げ、「またあの間抜けな面を拝んでやろう」と立向居の背後に回り込んだのも束の間──
「──うおおおッ!!」
デスタの予想より一瞬早く硬直から逃れた立向居が、今まさに自分の頭上を越えようとしていたボールに飛びついた。
「なにっ……ぐあっ!」
「立向居ッ!」
勢い余って後ろにいたデスタとぶつかり、ゴールラインすれすれに倒れ込んだ立向居に鬼道が反射的に声を上げる。
立向居は倒れ込んだまま自分の腕の中にボールがあるのを確認すると、力強く親指を立てて見せた。
「馬鹿なッ!?」
驚愕に目を見開くデスタの目の前で、起き上がった立向居は鬼道へボールを蹴り出す。
「鬼道さん!!」
「おう!!」
パスを受け取った鬼道は、台座から試合を見守っていた春奈へ目を向ける。
「(春奈……今助けるぞ、こいつらを倒してな!!)」
「(お兄ちゃん……!)」
兄の視線に気付いた春奈の表情が微かに明るくなる。その瞬間、言葉がなくとも兄妹の気持ちは確かに通じ合っていた。
「舐めやがってぇぇえ!!」
怒り狂ったデスタが追いかけてくるが、不動や佐久間が追走する方が早い。
2人が横に並んだのを確認し、鬼道は力強い声を上げた。
「決めるぞ! 佐久間、不動!!」
「おう!!」
跳躍し、高らかに吹き鳴らされた指笛に5羽のペンギンが召喚される。
中空で集約されていくエネルギーに、アスタロスは動揺で震える腕を持ち上げ構えた。
「皇帝ペンギン、3号!!」
「──ジ・エンド!!」
歪まされた空間に、空を滑空したペンギンもろともシュートが圧縮されて消えたのを見た春奈から短い悲鳴が上げる。
アスタロスは勝利を確信して思わず笑みを漏らしたが──次の瞬間、閉じたはずの空間が無理矢理こじ開けられるのを見て、彼は言葉を失った。
「なッ……!?」
空気を裂く轟音と共に、鋭い嘴は容赦なくゴールネットへ食らい付いていく。
スコアボードが3対2に切り替わり、その瞬間砂時計の砂が全て下に滑り落ちた。最後のホイッスルが鳴り響く。
「俺たちが、負けたと言うのか……!?」
「Yes! ミーたちのVictoryネ!!」
唖然とするデスタたちに、ディランがびっと自身を親指で差しながら宣言する。
一方で、老人により鎖から解き放たれた春奈は転げるように台座から駆け下りて兄に抱き着いた。
「お兄ちゃんっ! 怖かったよぉ……!!」
「春奈……! もう大丈夫だぞ」
安堵から涙を流す春奈の肩を安心させるように抱いて、鬼道が彼女を宥める。仲間たちもまた安心した様子でそれを見守っていると、ふいに聞き覚えのある声が一行の耳に届いた。
「──お〜〜い 、みんな〜〜!」
岩壁に反響したのは円堂の声だった。そちらを見ると、円堂たち紅組が長い階段を大急ぎで降りてくるのが見える。
その中にやや疲れた様子のリカの姿があるのを確認して、鬼道たちはホッと表情を緩めた。
「円堂!」
「勝ったんだな、お前たちも!」
「ああ!」
「当たり前だろうが!」
「音無さんも無事で良かったッス〜!」
円堂たちは互いの無事を喜び合い、これで決勝トーナメントに戻れる、と胸を撫で下ろす。
──ぱん、ぱん、と渇いた破裂音のような音が聞こえてきたのはそんな時だった。
「まさかデスタたちを倒してしまうとはな」
「ッ誰だ?」
デスタたちとは違う新たな声に、円堂たちはハッと表情を硬くする。響いてきた声は地下空間のあちこちに反響し、どこから聞こえているか判別が付かない。
「これが人の力か……だが、お陰で魂の力は集まってしまった。十分過ぎる程に」
「……エンドウ、あそこだ!」
辺りを見回していたエドガーが、ふいに上の方を指差す。
咄嗟にその指の先を追うと、役目を終えた砂時計の上に誰かが足を組んで腰掛け、ゆっくりと拍手をしていた。
身に纏っている衣装は、セインら天空の使徒ともデスタら魔界軍団Zのものとも違うものだ。強いて言うならば、あの老人たちがローブの下に着ていたものに似ている。
「何だ……? 誰だ、お前!」
その人物は老人たちと同じようなフードを目深に被り、暗がりであることも一因して顔を視認することは叶わない。
円堂の疑問には答えず、彼とも彼女とも分からない人物はフードの奥で大きく口角を持ち上げた。
「さあ──千年祭の幕開けだ」
その瞬間、突然大きな地響きと共に激しい地面の揺れが円堂たちに襲いかかる。
春奈やリカが短い悲鳴を上げ、円堂たちも反射的にその場にしゃがみ込む。やがて地面の揺れは落ち着いて、一行が顔を上げた頃にはフードの人物は姿を消していた。
「何なんだ、一体……?」
「んもう、何だってええわ! はよ合宿所に戻ろ。ほれ、春奈もそんな妙な服いつまでも着てやんと!」
「は、はいっ!」
色々なことがあって気疲れしたらしいリカに急かされ、春奈はスコアボードの裏手に放置されていた制服に着替えて戻ってくる。
「円堂……何か様子がおかしい。一先ず脱出した方が良いんじゃないか?」
「ああ……」
辺りを見回す円堂に、豪炎寺が周囲を警戒しながら言う。円堂はどこか釈然としない表情はあったが、その案を否定する理由もなく小さく頷く。
「そうだな……リカも春奈も無事に取り戻したんだ、早く御鏡を迎えに行って──春奈?」
顎を摘まみ言った鬼道は、ふと春奈が何かを探すような仕草をしていることに気が付いた。
「どうかしたのか」
「うん……あの魔界軍団Zって人たち、いつの間にかいなくなっちゃったなって……」
「……そう言えば」
円堂たちと再会し、謎の人物の登場に突然の地響きと、立て続けにイベントが起きたせいで彼らのことがすっかり意識の外に行っていた。
春奈の言う通り、魔界の戦士たちの姿は影も形も見当たらない。
「はっ。あれだけ見下してた人間に負けたんだ、恥ずかしくなってここより地下に逃げ帰ったんじゃねえのか?」
「はは、違いねえ!」
「ふん……情けねえ奴らだ」
肩を竦める不動に綱海が笑い、飛鷹が眉間に皺を寄せて鼻を鳴らす。あれだけ虚仮にしてきたデスタたちの鼻を明かし、飛鷹はいくらか分かり辛いものの3人は目に見えて上機嫌だった。
「何だろう、すごく嫌な予感がする……」
不安を拭いきれず、春奈が兄の腕に縋り付いた次の瞬間である。
「──お前たちの強き魂のお陰で千年の封印は解け、魔王は今目覚めた……!」
「!」
風の吹き抜けるような音に乗って聞こえてきたのは、姿を消したデスタの声だ。円堂たちはギョッとして辺りを見回す。
「今、破壊の時が始まる……!」
「っ、その声……!?」
デスタに続き聞こえてきた声に、円堂はハッと目を見開く。
すると、台座の向こうにあった扉が轟音を立ててもう一度開き始めた。青白い光を背負い、現れた11人のシルエットに一行の表情が驚きに染まる。
「デスタ……!」
「……セイン!?」
鬼道と円堂は同時に声を上げた。
そこにいたのは先程まで鬼道たちが戦っていた魔界軍団Zではなく、しかし円堂たちの戦った天空の使徒でもない。
天空の使徒と魔界軍団Zの戦士たちが入り混じった、橙色の衣装に身を包んだ一団だった。
「強き魂を食らい、魔王は復活した!!」
「我らはダークエンジェル──魔王の名を冠す者!」
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