Signal fire of re-war
「──えっ。総理大臣の娘!?」
SPフィクサーズとの試合の後。芝の上に座り込んでいた円堂が、目を見開いた。
「うん、びっくりした?」その正面に座った塔子は、円堂たちの反応にニカッと笑う。しかしそれも束の間で、彼女は真剣な面持ちになって続けた。
「あたし宇宙人からパパを救い出したい。だから、超強力な仲間が欲しいんだ……!」
ぐっとスーツの裾を握りしめた塔子は、「それで強引に俺たちと試合を……」と呟いた円堂に眉尻を下げる。
「ごめん、騙したりして」
「……いいさ! 気にするなよ!」
ぱっと笑顔になった円堂に釣られたように、塔子は頬の筋肉を緩めた。
そしてふと、円堂の後ろに腰を下ろすイレブンを見渡すと、彼女はもう1度口を開く。
「──あんたたちならエイリア学園に勝てるかもしれない。あたしと一緒に戦って欲しいんだ」
パパを助けるために、と塔子が語気を強めて言えば、円堂は戸惑うことなくそれに頷いた。
「勿論さ! な、みんな!」
円堂が背後を振り返れば、威勢の良い返事が返ってくる。
「……ありがとう!」塔子は目をしばたくと、嬉しそうに笑って見せた。ふと立ち上がった円堂が、塔子に片手を差し出す。
「俺、円堂守。よろしくな! えーっと……」
「財前塔子。塔子って呼んでよ」
塔子は同じように腰を上げ、円堂の手を握った。固く握手された手を見下ろし、2人はにっと笑う。
──その次の瞬間だった。ザザザ、と耳に付くノイズが青空に響く。
「何だ?」振り返った先にはあったのは、園内に置かれたイベント用の大型液晶パネル。画面は数秒乱れた後──やがて、1つの人影を映し出した。
『──地球の民たちよ。我々は宇宙からやって来た、エイリア学園なり』
「レーゼ!」
パネルを見上げた円堂が弾かれたように叫べば、塔子の視線も鋭くなる。
「あれが………」周りに倣い、画面に映るレーゼを見た織乃は、僅かに眉根を寄せた。
『お前たち地球人に我らが大いなる力を示すため、この地球に降り立った』
我々は野蛮な行為は望まぬ──と告げるレーゼに、どの口が抜かす、と染岡が歯噛みする。
『サッカーと言う1つの秩序の元に置いて、逆らう意味がないことを示して見せよう』
「くそ、あいつら一体どこに!」
淡々と続くレーゼの演説に、円堂は更に表情を険しくした。
「お嬢様!」その時、少し離れた場所で無線機で連絡を取っていたSPフィクサーズの一人が、こちらを振り向く。
「探知しました! 放送の発信源は、奈良鹿テレビです!!」
「ホントか、法子!?」
法子と呼ばれた女性は頷き、引き続き無線機での会話を続けながら顔をしかめる。
「どうやら奴ら、テレビ局をジャックしたようで……ジャックの実行犯は、総理を攫った者たちと同一と思われます」
「そうか──先手、車を回して! 桜は警察にも連絡! 局周辺を包囲して、蟻一匹逃がさないで!!」
「了解!」
きびきびとSPフィクサーズたちに指示を出した塔子は、桜が携帯電話を取り出したのを確認し、すっと大きく息を吸った。
「極火と舞は、局の正面玄関と裏口を封鎖! スミスはあたしと──あたしたちと一緒に、乗り込むよ!!」
こちらを振り返った塔子の目を見た円堂は、一瞬して力強く頷くと仲間たちと目配せし合う。
「──行くぞ!」
「おおッ!!」
園内の液晶パネルからは既にレーゼはフレームアウトし、淡い紫の光ばかりを映していた。
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「織乃さん、どうしたんですか?」
奈良の町並みを、キャラバンがトップスピードで駆け抜ける。
そんな中、織乃は真横から聞こえた春奈の問いに小さく肩を揺らした。
「え……どうって、何が?」
「いえ、何だかさっきからぼーっとしてたから」
ああ、と曖昧に頷いた織乃は、所在なさげに落ち着かない様子でモバイルを弄る。
「うん、ちょっと緊張してるだけだよ。心配しないで」
「そう──ですか。でも、大丈夫ですよ! みんないるんですからねっ」
語気を強めた春奈は、織乃が薄く微笑んだのを見ると大人しく椅子に戻った。
織乃はしばらく口を噤んでいたが、やがてふと息を吐いて俯く。
「エイリア学園って、一体どんなサッカーをするんだ?」
そう隣の円堂に問いかけるのは、共にキャラバンに乗り込んだ塔子である。
「とにかく強いんだ」と円堂が正面を見据えたまま言うと、彼女は眉間に皺を寄せた。
「例えどんなに強くたって、あたしはあいつらを倒す。パパを助けるんだ」
「俺だって! やられた仲間と壊された学校の為に、あいつらと戦うんだ!」
顔を見合わせた2人は、どちらからともなく拳を突き合わせる。この短い時間ですっかり意気投合したらしい。
「よし、着いたぞ!」やがて古株の声に、両者は勢いよく席から立った。
「ここか……」
キャラバンのステップを駆け下りた円堂が、テレビ局を見上げる。
屋上には、校舎を破壊された時見たのと同じ紫の光が、怪しく渦巻いていた。
「──テレビ局の人間は、既に警察が全員避難させたようです。エレベーターも正常とのこと」
「よし……行こう」
無線機との通信を切った角巣の言葉に、表情を引き締めた塔子が頷く。
「こっちです」左右に開いた自動ドアを潜れば、先に中に潜入していた極火が雷門イレブンと塔子をエレベーターへ誘った。
乗り込んだエレベーターは、ゆっくりと最上階へ昇っていく。
扉が開き、真っ先に外へ飛び出した円堂は屋上の鉄扉を開くなり、叫んだ。
「──レーゼ!!」
本来ならば、ヘリポートとして使用される屋上。そこには階下から見た通り、紫の光が溢れている。
そして、その光が最も強い場所──そこに彼らはいた。
ジェミニストームを率いたレーゼが、ゆっくりと振り返りこちらと向き合う。
その瞬間、織乃がまた少し眉根を寄せたことには、誰も気付かなかった。
「探したぜ、エイリア学園!」
肩を落ち着かせた円堂が、ジェミニストームに指を突きつける。
「探した?」僅かに不可思議な表情になったレーゼは、その言葉に目を細めた。
「我らに敵わぬことが分かり、降伏の申し入れか?」
どこまでも人を──人間を見下した態度に、前回彼らと戦えなかった一之瀬と土門が顔をしかめる。
「だが、ゲームは始まったばかり……地球人は真に思い知らねばならない。我らの大いなる力をな」
「誰がお前らに降伏なんか!」
ふんと鼻を鳴らした円堂が、バンと持っていたサッカーボールを両手で叩いた。
「俺たちが探していたのは、コイツでもう一度勝負するためだ!」
「勝負?」
淡々とおうむ返ししたレーゼに、染岡たちが食ってかかる。
「学校をめちゃめちゃにされて、黙って引き下がれるか!」
「マックスや半田、みんなのためにも、今度こそお前たちを倒してやる!」
「聞いたか? 俺たちを倒すだと」風丸の言葉に、ジェミニストームたちが小馬鹿にしたように笑った。
それでも円堂は意志を揺らすことなく、挑戦を叩きつける。
「勝負だ、レーゼ!」
声に呼応したように、突如吹き荒れた風が紫の光をどこかへ浚った。
風が止むと、それまで静観していたレーゼが再び口を開く。
「──それは出来ない」
「な……どういうことだ!」
「お、怖じ気付いたんですね!」引きつった声で目金が虚勢混じりに言ったが、相手のキーパーに睨まれ壁山の背中に隠れる羽目になった。
「言ったはずだ。我々はサッカーという一つの秩序の元に置いて勝負をすると。10人しかいないお前たちに、我々と戦う資格はない」
「11人目ならここにいる!!」
ふいに、それまで黙り込んでジェミニストームを睨みつけていた塔子が、円堂たちの前に躍り出る。
「これでどう!?」徐に黒いスーツを脱ぎ捨てた塔子がその下に身に着けていたのは、黄色と青。雷門のユニフォームだった。
「雷門ユニフォーム!?」
「いつの間に……」
マネージャーたちが大きく目を見開き、秋が少し苦笑する。
塔子は誇らしげに胸を張り、挑戦的な目でレーゼを睨め付けた。
「パパは取り戻す。アンタたちを倒してね!!」
「さ、11人揃ったぜ!」塔子と目配せし合った円堂が言えば、レーゼはふっと鼻を鳴らす。
「……我らも甘く見られたものだ」
それまで落ち着き払っていたそれから僅かに冷たく変化した声色に、ピンと空気が張りつめた。
臨戦態勢になるジェミニストームに、弥が上にも雷門イレブンの緊張は高ぶっていく。
「良いだろう──ニ度と立ち上がれないよう、叩き潰してくれる」
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