64

ホーリーライナーに運ばれてやって来た2回戦の会場。準備を済ませ、廊下に並んだ両チームの前で、ゆっくりとフィールドへ続く扉が開いていく。
途端、隙間から溢れてきた冷たい空気に、誰かがくしゃみをした。

「エアコンの設定間違ってません……!?」
「そういうレベルじゃねーよ、コレ」

剥き出しになった腕を擦りながら呟く葵に、水鳥が頭を振った。びゅう、と吹き込んで来る風は、確かに冷房が効いていると言うには冷たすぎる。
全開になった扉の先を見た天馬は、次の瞬間あんぐりと大口を開けた。

「何だ、ここ……!!」

照明に反射し、白く輝く床や壁。彫刻のように削られたフィールド。そのどれもが、冷たい。
──そのスタジアムは、全て氷で形作られていた。

「スノーランドスタジアム……」

両腕を擦りながら、スコアボードに記された文字を依織は読み上げる。

辺り一面が凍り付いた氷のフィールド。ここが今日、雷門イレブンが戦う場所。ちらりと白恋の方を見ると、特に驚いた様子は見られない。
月山国光がそうであったように、事前にどんなフィールドで戦うことになるか報されていたのだろう。

「ここ、めっちゃ滑るんだけど……こんなんでどうやってサッカーしろっちゅーのよ」

ぐ、と氷を踏み締めながら、浜野が肩を竦めた。
すぐ後ろで、足を滑らせた信助が輝を巻き込んで転倒している。テクニカルエリアに辿り着くのも一苦労だ。
一方で、白恋は何の苦も無く氷のフィールドを歩き、既にアップを始めている。白恋は北国にある学校だ。滑りやすいフィールドに慣れているのだろう。

しかしぼやいている暇も無い。慣れない足場に苦戦しながらアップをしていると、控え室の方から春奈がテクニカルエリアに駆け込んできた。

「みんな、良いニュースよ。錦くんが戻ってきたわ!」
「えっ、錦が?」

何かの書類を片手に意気揚々と報告した春奈に、雷門イレブンの──特に、上級生たちの表情が明るくなる。

「さっき空港に着いたんですって。今こっちに向かってるそうよ」
「驚いたな……突然帰ってくるなんて」

口ではそう言いながらも、神童の目は輝いている。錦は雷門にいた頃から強力なストライカーだった。不安要素の多いこのフィールドで、きっと大きな戦力になるに違いない。
イタリア帰りのプレーを見られると言うことで、天馬と信助は神童たちとはまた少し違う意味で目を輝かせている。

「春奈、追加の選手登録は可能か?」
「ええ」
「よし、頼む」

はい、と大きく頷いた春奈は、控え室の方へ直ぐさまとんぼ返りした。空港からスタジアムまでそう遠くはない。何事も無ければ、きっと後半戦が始まるまでには間に合う筈だ。
深呼吸を1つ。体を温めた神童は、自分の指示を待つ仲間たちを振り仰いでセンターサークルへ足を向けた。

横一列に並び、白恋イレブンと向き合う。
神童を見下ろし、白咲は唇を意地悪そうに歪めた。

「雷門のホーリーロードは今日で終わりだ」
「ぶっ潰す……!」

飢えた獣のように、雪村は眦を釣り上げる。しかし、その瞳が見据えているのは雷門イレブンではない。

「(雪村……気付いてくれ。今の白恋は、間違った道を進んでいるんだ)」

雷門のベンチに腰掛け、吹雪は膝に置いた拳を握り締めて雪村を見つめる。
雷門イレブンも、負けじと白恋イレブンをにらみ返した。こんなところで潰される訳にはいかない。最後まで勝ち抜いていかないと、革命は成功しない──本当のサッカーは取り戻せないのだから。

「(絶対に負けられない……!!)」

所定のポジションに着く。
一呼吸置きホイッスルが鳴り響いて、ついに試合が始まった。キックオフは雷門からだ。

「走り辛いな……!」

氷に足を取られないようにしつつ、ボールを蹴り損ねないように走る。言葉にすれば簡単に聞こえるが、実際やるとなると別だ。走る先と足下を交互に見ながら、倉間は歯噛みする。
磨き抜かれた氷は容易く牙を剥いて、ボールの軌道を僅かにずらす。ぼん、と鈍い音を立てて、倉間の足からボールが離れた。

「あ──くそッ!」

数歩先へ転がったこぼれ球を拾った木瀧へ、倉間は直ぐさまスライディングを仕掛けてボールを取り返す。
冷たいフィールドを滑り、ボールは削られて出来たラインの外へ転がっていった。

「これは……」
「思った以上にマズいですよ、神童先輩」

眉根を寄せた神童に、依織が後ろで呟くように口早に言う。氷のフィールドは雷門イレブンの動きを制限すると同時に、ボールのスピードを僅かに変えている。
──いつもなら取れるパスも取れない。ボールの動きが早くなったことに加え、不安定な足場のせいでタイミングが合わないのだ。

「何とかしなくちゃ……!」
「そんな走りじゃ、何も出来ないぜ!」

どうにか攻め込もうとする天馬に対し、まるでここがホームグラウンドであるかのように易々と彼の目の前に走り込んできた雪村が、ボールを奪っていく。
上手く攻撃に転じることが出来ないこの状況では、ただひたすら防御に徹するしか無い。
「鷹栖!」防戦一方が続く中、隙を突いて白恋からボールを奪った霧野が、高くボールを打ち上げた。

「ナイス霧野先輩!」

何とかボールを受け止めて、依織は白恋陣内に切り込む。
この足場ではスパークリングウルフも使いこなせない。忙しく目を動かし、少しの隙間を縫い、どうにか中盤まで突破したところで視界の端に剣城が走り込んできた。

「こっちだ!!」
「っ剣城!!」

瞬間、ず、とスパイクが氷を削った。僅かに傾いた体勢で放たれたパスは、剣城の前を変則的に弾んで通り過ぎていく。

「くそ……!」

転がったボールは、ラインの外へ出る直前に真狩によって拾われた。
そのまま雷門陣内に打ち上げられたボールに、神童がハッと振り返る。攻撃に移ろうとしていた雷門陣内には、4人しか選手が残っていない。

「っみんな戻れ!!」
「遅いッ!!」

DFのフォローも間に合わず、ボールを受け取った雪村がゴールの前へ飛び出した。
彼の周りに渦巻いていく冷気に、吹雪は目を見開く。自分が彼に教えたエターナルブリザードと同じ初動。だが、沸き立つ冷たい闘気は、彼自身の物だ。

「これが俺の力だ……! パンサーブリザード!!」

吹き荒ぶ風が、獣が咆哮するかの如く唸りを上げる。
三国が反応するよりも、早く鋭く、雪村の放ったパンサーブリザードは雷門のゴールネットに突き刺さった。

「速い……!」

得点のホイッスルに、神童の悔しげな声が掻き消される。
先取点を奪われた今、先程までのように守りにばかり傾倒するわけにはいかない。何とかして突破口を開かなければ。神童は氷の上を弾むボールを睨み付けた。

先に点を取ったことで調子が乗ったのか、雪村は氷上を滑るようにして再び雷門陣内に攻め上がってくる。
「止めるぞ狩屋!!」これ以上進ませるわけにはいかない。髪を揺らし走り出した霧野に、狩屋が続いた。

「止められるもんなら止めてみろよ……!」

立ち塞がった霧野に、雪村は獰猛な笑みを浮かべて氷を蹴る。
スパイクに削られ氷の粒が散り、前のめりに抜かれた霧野に狩屋は一瞬目を細めた。

「(あれなら、もしかすると……!)」

雪村が目の前まで迫ってくる。
一度切り抜かれたと思わせてすぐ、狩屋は体勢を崩した。前を行く雪村と同じように体を傾け、スパイクの縁で氷を滑るように。

「よっ──と!」
「!!」

まさかあの体勢から追いつかれるとは思わなかったのだろう。背後に張り付いた狩屋に目を見開いた雪村の動きが、一瞬鈍った。
それを見逃すほど狩屋も優しくはない。体を倒し、そのままスライディングで雪村の足下からボールを弾き飛ばす。

「ちっ……!」

クリアされたボールにホイッスルが鳴り響き、雪村は舌打ちを溢して自陣に戻っていく。
「それだ、狩屋!」息を吐き立ち上がる狩屋に手を貸しながら、霧野は目を輝かせた。

「スパイクの縁を使えば、あいつらのように動きをコントロール出来るみたいだな!」
「え?」

狩屋は目をしばたき、足下に視線を降ろす。
実際の所、彼は雪村の動きを真似してみただけだ。しかし、それが功を奏したらしい。

「みんなに伝えよう。これで氷のフィールドを怖がらずに戦える……!」




「スパイクを使って、動きをコントロールする……!」

再開直前、霧野たちから伝えられた方法を口の中で繰り返し呟きながら、天馬は走った。
スケートをする時の感覚とよく似ている。薄い刃を氷に走らせて、行きたい方向に体を傾けるイメージだ。一度コツを掴むと、先程までの苦労が嘘のように動きやすくなる。

「これならドリブルミスもパスミスもなくなるな──っと!」

真っ白な氷の上を走り抜ける、青白い電流。スパークリングウルフで射月を抜き去り、天馬にパスを上げる。
そよかぜステップで白恋のディフェンスラインを突破した天馬は、そのままゴール付近へ駆け込んだ倉間へボールを打ち上げた。

「ふん……動きが良くなったところで、ゴールが奪えるわけでもあるまい!」

繰り出されたサイドワインダーに、白咲は飛騨比拳を突き出した。パキパキと広がる氷が、大きな雪の結晶を模した盾に変化する。

「──クリスタルバリア!!」

盾に振れた箇所から、ボールの表面が見る見るうちに凍り付いていく。
やがて自重で勢いを無くし、どすんとフィールドに沈んだボールに、白咲はニヤリとした笑みを倉間へ向けた。

「っあー、惜しい!」
「でも、段々良い感じになってきてますよ!」

頭を掻き毟り叫ぶ水鳥に、肩を擦りながら葵が言う。茜は雷門の動きが良くなった辺りから延々とシャッターを切っている。
点は取れなかった──が、相手はシード。一筋縄で行くなんてことは初めから考えていない。

「さぁ、攻めていけェ!!」
「ハイ!!」

白い息を吐き出しながら叫ぶ円堂に、選手たちは大きく答えた。

神童からパスを受け取った剣城が、白恋陣内に飛び込んでいく。
──行かせると思うか。低く呟き、ディフェンスラインの中央後方へ下がった真狩が、左右に散った仲間たちに視線を投げて利き手を振り上げた。

「必殺タクティクス……絶対障壁=I!」

次の瞬間、散らばっていた白恋のDFとMFたちがフィールド中央に集まり、剣城の行く手を阻む。
まるで巨大な氷壁のようなディフェンスに、ふいを突かれた剣城は思い切り弾き飛ばされる。

「剣城!」
「そんな……剣城が止められた!?」

ずざざ、と反動で大きく後退った剣城は、分厚い氷の壁を忌々しげに睨み付けた。
悔しがっているのが端から見ても分かったか、ゴールの白咲が小馬鹿にするように鼻を鳴らす。

「ふん……見たか、これが白恋の必殺タクティクス絶対障壁≠セ。お前たちにはこれを破ることなど出来ない!」

高く笑う白咲に、吹雪は歯噛みした。
白恋の力が存分に引き出せるフィールドだからか、絶対障壁は以前見た時よりも更に強力な物に進化している。
見事、としか言いようが無い。教え子の成長を嬉しく思う反面、やはり何もしないままでは雷門があのタクティクスを破ることは不可能だと知り、焦りが募った。

「天馬、剣城。ダブルウィングで攻めるぞ。良いな」
「はい」

足早に2人に近付き、小声で指示を出した神童に、天馬と剣城は小さく頷く。
「囮を頼むぞ」続けざまにそう投げ掛けられた倉間と依織は、無言で白恋陣内を振り返った。

浜野のスローインで、神童へボールが渡る。
そこから天城にパスを上げるや否や、神童は白恋陣内に向かって走り出した。

「行くぜ!!」

天城から受け取ったボールを、倉間が剣城へ向かって打ち上げる。
白恋の選手たちに近付くにつれ6人編成だった隊列を、3人ずつ2手に分けて行く。 それぞれ左右に別れた天馬と剣城が交互にパスを繰り返し、走るスピードを徐々に上げていく。

「行くぞ! 必殺タクティクス──!」
「ダブルウィング=I!」

ぐん、と加速した2組の隊は、まるで翼のように闘気を広げてフィールドを縦断した。
両サイドに分かれ突進してくる雷門イレブンに、片方髪に隠れた目を動かして真狩が呟くように言う。

「──左だ」
「うわあッ!?」

瞬間、障壁が左に動き、行く手を阻まれた左側の3人──天馬たちは、無様に冷たいフィールドに転がった。
短く呻き天馬たちを振り返った剣城の足下には、ボールはない。

「ダブルウィングでもダメなのか……!?」

氷に手を突きながら、天馬はよろよろと起き上がる。
「ッもう一度だ!」白恋イレブンに動揺は見られない。奥歯を噛み締めた神童が叫んだ。

「…………」

絶対障壁に立ち向かっていく2回目のダブルウィングを、テクニカルエリアの円堂と鬼道は静かに見つめる。
初動、タイミング、走る速さ。再び障壁に阻まれた瞬間、2人はほぼ同時に顔をしかめた。

「──松風では、パスのスピードが足りないんだ。ダブルウィングは完成していない!」
「どっちがボールを持っているか、見極められてるってことか……!」

鬼道の出した結論に、円堂は鼻に皺を寄せながら唇を噛む。
その後に動いても間に合うのは、氷のフィールドだからこそ可能な移動スピードのせいだ。今の天馬では、そのスピードを上回るパスが出せない。

「パスのスピードか……」

顎に手をやって、ベンチに腰掛けた輝は真剣な目でフィールドの仲間たちを見つめた。
攻め手を失った雷門は、また防戦一方の状態に押し戻されてしまう。やがて疲弊した雷門イレブンの隙を突き、三度雪村がゴールの前へ躍り出た。

「パンサーブリザードッ!!」
「フェンス・オブ・ガイア!!」

間一髪、三国の繰り出した必殺技が、雪村のシュートを弾いた。
「どうだ!」握り拳を胸の前へ突き出し自身の士気を鼓舞する三国に、跳ね返ってきたボールを受け止めた雪村の目つきが変わる。

「まだだ……! 出てこいッ、俺の化身!! 《豪雪のサイア》!!」

その瞬間、吹き付ける冷気が一層冷たいものに変化した。
吹雪いた氷の粒は、闘気に混じり人の形を取る。──現れたのは、軽鎧を纏い白い槍を構えた、雪の女王と言うべき美しい姿の化身。

「アイシクルローーーード!! 」

豪雪のサイアと呼ばれた雪村の化身は、涼やかな笑みを湛えて長い槍を操った。
吹き荒ぶ風は更に冷たさを増して、ボールの弾道を息つく間もなく凍てつかせていく。
あまりに速く、刹那的な美しささえ垣間見えるその氷のシュートは、三国が反応する暇も与えず雷門のゴールを凍り付かせた。

「そうか……フィフスセクターは、雪村のこの力を手に入れたくて、僕を追放したのか……!!」

やっと分かったフィフスセクターの真の目的に吹雪は歯を食い縛ったが、今頃気付いても後の祭り。
0対2。攻撃手段のない今の雷門にとっては、絶望的な差である。

「くっ……! もう一度やるぞ、ダブルウィングだ!!」
「無駄だと言うことが分からないのか?」

叫ぶ神童に、白咲は棒立ちで肩を竦めた。雷門が時間内にゴールに近付くことはないと判断したのだ。
そしてその予定通り、未完成の三度目のダブルウィングは、絶対障壁に阻まれてその翼を散らす。

フィールドに転がり顔をしかめる天馬たちに、雪村は冷え切った視線を投げ掛けた。

「これがあいつの教えた作戦か……使えないな」
「そんなことはない……!必ず突破するさ!」

弾かれたように起き上がり、天馬が言い返した途端ホイッスルが鳴り響く。
前半終了が終わってしまった。悔しげに眉根を寄せて雷門イレブンがテクニカルエリアに戻る中、ふいに吹雪が立ち上がる。

「──雪村」

彼が向かったのは、雪村の元だった。視線がいくつかこちらに集中するのを感じながら、雪村は振り返る。

「教えてくれ。何故君までフィフスセクターに従う?」
「……あんたに勝つためさ」

つっけんどんに答えた雪村に、吹雪は悲しげに表情を歪めた。
確かに雪村には直情的な面がある。──が、それでもこんな自棄を起こすほど短絡的でも無かったはずなのに。

「君は、フィフスセクターがどんなサッカーを推し進めているのか──」
「知ってるさ!!」

言葉尻を掻き消して、雪村は食い気味に叫んだ。
それなら、何故。苦しげな問いに、雪村は一瞬俯いた後、吐き出すように答える。

「──フィフスセクターは、絶対に俺を裏切らない」
「……!」

瞼を閉じれば、吹雪と特訓してきた時のことは簡単に思い出せた。

どんな時でも全力でやらなければ先には進めない──そんな持論が仇となり、その温度差のせいで雪村はよくチームメイトと衝突していた。
そんな中、コーチとして現れたのが吹雪だ。
彼はチームメイトのように雪村を疎ましく扱うこともせず、寧ろ彼の真っ直ぐなプレースタイルを応援してくれた。仲間と上手く連携する方法や、パンサーブリザードの前身になった必殺技を教えてくれたのも吹雪だ。

けれど、彼はいなくなってしまった。また練習しようね、と最後に言ったきり、別れを告げることも無く白恋から姿を消したのである。
──独り、誰もいない雪の降るフィールドで来ることのない人を待ち続けた時間は、永遠のように感じた。

「──あんたは俺を裏切った。一緒に強くなろうと言ってたくせに!!」
「そうじゃない! あれはフィフスセクターが仕組んだことなんだ……君の能力に目を付け、僕を遠ざける為に!」

「今更言い訳か!」吼えた雪村に、吹雪は押し黙る。
確かに、今この場に置いては、吹雪の言うことは全て言い訳にしかならない。雪村の言葉は確信を突いていた。

「俺はあんたを見返してやろうと心から誓った。だから雷門を倒し、あんたに勝つ!!」
「……雷門サッカー部は、君が考えているよりも手強いぞ」

ふいに、吹雪の雰囲気が少し変わったような気がして、雪村は一瞬口を噤む。
悔しくてたまらなかった。自分の尊敬していた先輩に裏切られ、あまつさえ敵に策を与えていたことが、悔しくて悲しくて、仕方がなかった。

「俺はっ……俺自身が編み出した必殺技で、雷門を叩きのめしてやる!!」

吹雪から顔を背け、踵を返した雪村は乱暴な足取りで白恋のテクニカルエリアに戻っていく。
「吹雪さん……」白い吐息を吐いて肩を落とす吹雪の背中を見て、天馬はちらりと円堂を見上げた。

「監督……俺たちがこの試合を全力で戦えば、きっと……きっと、白恋の人たちに分かってもらえますよね……!?」
「ああ。吹雪もそう思って、この試合を雷門に託しているんだ」

そうでなければ、何の意味も無い。これは大人が昔を取り戻すためだけの戦いでは無いのだから。
観客席の喧噪を聞きながら、円堂はスコアボードを見上げた。