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子供の中に大人が混じってサッカーをするという、公式の試合ではまず有り得ない異様な光景。中でも、シュウと白竜のすぐ後ろで仁王立ちする牙山の存在は際立っていた。
ルールは全てあちらが握っている。勝者こそ正義、絶対──牙山の示す通り、今の状況は雷門に取って圧倒的不利だ。しかしそれでも、戦いを止めるわけにはいかない。

「怯まずに行くぞ!!」
「おお!!」

神童が檄を飛ばすと同時に、ホイッスルが鳴り響く。
キックオフはゼロからだ。シュウのタッチしたボールを白竜が受け取り、それは間髪入れずバックパスで牙山へと渡る。
ボールに踏みしだく勢いで足を乗せ、牙山はニィと犬歯を剥き出して笑った。

「さあ、指導の時間だ!!」

チームに入った大人たちは雷門イレブンを取り囲み、凄まじい風圧を巻き起こすパス回しを繰り返して彼らを翻弄し、痛めつける。
だが、決して点を取ろうとはしない。ゴール前へボールを運んでも、わざと三国やDFたちをいたぶるようにボールをぶつけるのだ。

「こんなのサッカーじゃない!!」
「当たり前だ。これは教育≠セからな」

喉が嗄れんばかりに抗議する天馬をせせら笑いながら吹き飛ばし、牙山は大きなパスを上げる。
その落下地点に走り込んだのは、シュウだ。既に雷門イレブンはポジション関係なくボロボロで、とてもではないが彼を止める体力は無いに等しい。

「──ブラックアッシュッ!!」

ぐっと折り曲げられたシュウの体から、漆黒の闘気が溢れ出す。闘気はやがて渦となり竜巻となり、三国の倒れた雷門のゴールに突き刺さった。




どれだけ雷門イレブンが傷付こうと、牙山たちは教育≠ニ称したラフプレーを止める気配がない。
一方的な試合に、観客席のシード候補生たちの興奮は更に高まっていく。それははたから見ても、狂信的な光景だった。

「……さあ。どうする、円堂」

こつ──と椅子の肘掛けを指で叩いて、観覧席のイシドはテクニカルエリアの円堂を見下ろす。
その表情には、何の感情も込められていないように見えた。




「このままでは天馬たちが潰れてしまうぞ……!」
「も、もう見てられないッス……!」

ライン際ギリギリまで近付いた位置に立ち竦み、風丸は唇を噛み締める。壁山もまた彼の隣で、大きな掌でちらちらと視界を遮っては呻き声を上げた。

「お前ら分かってねーな。俺たちがじたばたしても始まらねえだろう。これは天馬たちの試合だ」

ただ1人ベンチに腰掛けた不動は2人を諫めるような口調で言ったが、その声音が彼もまた苛立っていると言うことを如実に表している。

「……円堂」
「…………」

眉間に深い皺を刻み込み、鬼道は視線をフィールドから傍らの円堂に移した。円堂は古傷だらけの手を爪が食い込むほど握り締め、じっとフィールドを見つめている。
その視界の中央。そこで、何度目かも分からない凶刃、殺人的な威力のボールに倒れていた天馬が起き上がった。
体中の痛みに喘ぎ、意識が朦朧とする。けれど天馬は、彼らはまだ、諦めていない。息も絶え絶えに、天馬は叫んだ。

「絶対許せない……サッカーが……サッカーが泣いてるよ!! こんなのサッカーじゃないって、泣いてるよ……!!」

──円堂はハッと息を飲んで、広げた掌をじっと見下ろす。
その脳裏に蘇ったのは、まだ久遠たちから日本に招集される前。雷門の監督になるように誘われて間もない頃に聞いた、祖父の言葉だった。

『お前は監督になったのだ。監督とキャプテンは違う。プレーでチームを引っ張るのではない。監督の力は、ここだ』

そう笑って、祖父は自分の胸を叩いた。病に伏した彼が亡くなる、ほんの1ヶ月程前の言葉だ。
かつて家族やチームメイトたちを守るため、自分のことは顧みず自らの生死を偽って日本から消えた祖父。
彼はひとりの監督として、大事なことを教えてくれた。

「どうしたッスか? キャプテン」

突然ポケットに手を突っ込んだ円堂に、壁山がフィールドと彼に視線を彷徨わせながら尋ねる。
円堂が取り出したのは、キーパーグローブだった。年季の入ったそれをギュッとはめて、円堂はフィールドを睨み付ける。

「監督として1番大切なことは……それは何があっても、チームを、守ることなんだ!!」
「!!」

風丸たちは目を見開いて、毅然と声を張り上げた円堂を見つめる。その姿に、牙山もまたまさか、と瞠目した。

「円堂、お前……!」
「やれやれ。これだからサッカーバカは困るぜ」

ベンチから不動が待っていましたとばかりに腰を上げる。皮肉めいた口調でも、彼の牙山を睨む目は怒りに満ちている。

「──付き合うぜ、キャプテン」
「キャプテン、か。懐かしい響きだな」

風丸はやや呆気に取られていたが、不動の言葉で冷静になったのだろう。感嘆したように頷いて、彼は自分の胸を叩く。

「不動の心意気、俺も乗ったぜ!」
「僕もだ!」
「俺も乗ったッス!」

頷いた吹雪や壁山も、円堂の周りに集まる。
「みんな……」仲間を見回す円堂の背中を叩いて、その隣に鬼道が並んだ。

「やろう、円堂。奴らに雷門の底力を見せてやる」
「ああ!──行くぞ、みんな!」

おお、と声を上げて青年たちがサイドラインに駆け込んだ。
そしてその足がフィールドに踏み込まれたその瞬間──不思議なことが起こった。

「キャプテン……みんな……!」

大きく見開かれた春奈の目に映ったのは、光の粒子。それに包まれた彼らの姿が、瞬く間にかつてイナズマジャパンとして戦った頃の少年の姿へと変化する。
幻覚や見間違いなどではない。マネージャーたちも、控えの一乃と青山も、フィールドの雷門イレブンも、ゼロでさえも目の前で起きた出来事が信じられず目を丸くした。
それは彼らの熱い想いに答え、この島に住まう神がもたらした軌跡だったのかもしれない。

「天馬すまん! お前たちの試合、一旦俺たちに預からせてくれ!!」
「え、円堂監督……!?」

天馬は痛みや疲れも一瞬忘れ、幼くなった円堂を唖然として穴が空くほど見つめる。
近くに寄っても、彼らは紛うことなく子供の姿になっている。ポカンとしている依織の手を引いて起き上がらせたのは、鬼道と不動だ。

「依織、お前は一旦下がれ。俺たちのプレーを見ておくんだ」
「そして吸収しろ。俺たちの力を、自分の物に変えて使い熟せ」

依織はしばし丸くした目で2人の顔を見つめていたが、やがて落ち着きを取り戻して息を長く吐き出す。
次に面差しを上げた時には、もういつもの彼女だった。

「──じゃあ、お言葉に甘えてしっかり勉強させてもらいますよ。師匠」
「ああ。任せておけ」

2人の師匠に背中を叩かれて、依織はベンチに体を引き摺っていく。
勿論、控えに回されて悔しくないわけがない。けれど今は、彼らのサッカーをこの目で見たかった。今までずっとテレビの中でしか見ることのなかった伝説≠、目に焼き付けたかった。

「お互い6人の選手交換だ。認めさせてもらうぞ!」
「ぬう……ッ!?」

有無を言わせぬ声音で言った鬼道に、牙山は動揺を隠せず瞠目したままである。
円堂たちはダメージの大きい選手たちを下がらせて、代わりにそのポジションに着く。三国に変わりゴールの前に立った円堂が、大きく息を吸い込んだ。

「──天馬!」
「!」

天馬はハッとしてゴールを振り返る。
いつも三国がいる場所には、円堂が立っている。円堂は大人の姿と何ら変わらない、力強い笑みを見せて言った。

「雷門の力、見せてやろうぜ!!」
「……! ハイッ!!」

牙山は落ち着きを取り戻しながらも、目の前で起きた奇跡に内心舌舐めずりをしていた。原理は理解できないが、今目の前には伝説のイナズマジャパンの全盛期の姿になった青年たちがいる。彼らのデータを加えれば、計画はより高みへ近付くだろう。
そんな牙山の打算は知らず──知ったとしても言うことは変わらないだろう。グローブをはめた手を叩き合わせて声を張り上げた。

「さあみんな! サッカーやろうぜ!!」
「おおッ!!」

走り出した彼らを春奈は涙ぐみながら見つめていた。円堂が、兄が、あの頃の彼らが帰ってきた。そして子供達と一緒に戦っている。夢であれ現実であれ、その光景は魔法のようだ。
涙を拭う春奈を一瞥して、依織は地面に座り込みながらつぶさにフィールドを見つめる。盗める技術は全て盗む。不動の言った通り、吸収してみせる。ベンチに下がっても、彼女の闘志は消えはしない。

開幕から真っ先に天馬のボールを奪ったシュウは、冷静に雷門イレブンを観察しながら牙山へパスを回す。

「他愛もない! 貴様らなぞすぐに潰してくれる!!」
「そうは行かないッス!ザ・ウォーール!!」

ドリブルで雷門陣内に駆け上がった牙山の前に立ち塞がったのは壁山だ。
雄叫びと共に地面から迫り上がった巨壁は、あの頃より格段に厚く固い。進路を阻まれた牙山は壁に弾かれ、その拍子にボールも足元から離れて行く。

「ぐぅっ、こんな古臭い技に……!」
「完全進化したザ・ウォールッス!プロリーグの意地を見せるッス!」

「風丸さん!」巨躯を感じさせない軽快な動きでボールを奪った壁山は、それを風丸へ向かって打ち上げた。

「よし──疾風ダッシュ!!」

向かってきた火北と大風谷を風を纏った高速移動でかわし、彼らが目で追う間もなく抜き去っていく。
そのままゼロ陣内に飛び込んだ風丸は、青い髪を靡かせながら吹雪へパスを出した。ゼロたちの妨害をかいくぐり難なくボールを受け取った吹雪が跳躍すると、辺り一面に冷たい空気が渦を巻く。

「吹き荒れろ! エターナルブリザード!!」

旋回した吹雪から、ブリザードを伴う氷結したシュートが放たれる。それだけでは終わらない。氷の軌跡を描くシュートを見送りながら、吹雪は続け様に叫んだ。

「鬼道くん、シュートチェインだ!!」

言い終わる間もなく、既に吹雪の意図を汲んで前線へ飛び出していた鬼道が高らかに指笛を吹き鳴らすと、すかさずそこへ風丸と不動が走り込む。
周囲から姿を現したペンギンたちは、鬼道がシュートチェインで繋いだ一撃を取り囲むように翼を広げロケットの如く飛び回った。

「皇帝ペンギン、2号!!」

鬼道の打ったボールは不動と風丸のキックにより、更に加速し威力を増す。フィールドを抉らんばかりの勢いで放たれたシュートは、スタジアムの空気を文字通り激震させた。

「何て息の合った連携だ……!」

集まったのは久し振りだろうに、1つの乱れもないプレーに、神童が息を飲む。
対するゼロのゴールには、まだキーパーの六塔が待ち構えている。止めろ、と牙山の怒号が飛び、構えを取った六塔の指先からバリアのように禍々しい色の光が広がった。

「グラビティポイント!!」

皇帝ペンギン2号の鋭い嘴が閃き、六塔に襲い掛かる。
しかし、激突するかのように思えたその直前、シュートはグラビティポイントを避けるように大きく舞い上がった。

「バカめ、シュートミスか!」

ボールを追いながら、牙山が吐き捨てる。
だがその余裕もすぐに消えて無くなった。ボールが舞い上がった先にあったのは、葵の閉じ込められた鉄の檻だったのだ。

「あっ……!?」
「葵ィ!!」

ペンギンたちの嘴で鉄格子はへし折れ、衝撃でバランスを崩し檻の外へと放り出された葵に天馬と依織が同時に叫ぶ。
あわや地面にぶつかる、と言うところで彼女の下に滑り込んだのは、いつの間にかテクニカルエリアから飛び出した一乃と青山だった。

「せ、先輩たち……!」
「いったた……ま、守ったぜ!」

葵に押し潰されながら、2人はサムアップして天馬たちに答える。
葵は慌てて2人から降りると、何度も頭を下げて礼を言った。

「葵! 怪我は!?」
「大丈夫! 先輩が助けてくれたから……!」

傷だらけの腕を伸ばし、迎え入れた依織の胸に葵が飛び込んでいく。
良かった、と呟いた依織が抱え込んだ葵の頭を撫でれば、安心したのか彼女の目にうっすらと涙が浮かんだ。

「これで人質はいない! 遠慮なく行け、みんな!」
「──ああ!」

その様子をホッとしたように一瞥し、声を張り上げた一乃に神童が大きく頷く。
天馬は依織に抱き着いたままの葵と視線を交わすと、笑顔を浮かべ小さく頷き合った。

「守ったのか……天馬」

仲間たちに迎えられた葵、そして力強い笑顔で退治する天馬を見つめ、シュウは呆然と呟く。
彼らは強い力ではなく、チームの仲間と力を合わせることで、大切なものを守って見せたのだ。
彼はどこまでも自分とは違う道を歩いている。シュウの目には、複雑な感情が渦を巻いて宿っていた。

「おのれ! 奴ら、よもや始めからあれが狙いでシュートを外したとは……!」

一方で、苦々しく歯軋りした牙山は地面を踏みしだいて教官達にアイコンタクトを送る。
試合が再開されると、大風谷がスローインしたボールをすかさず牙山がキープした。

「お前たち如きが、我々の力を超えられるものか!!」

その哮りを合図に、大風谷、林野、そして火北が必殺技のフォーメーションを展開する。1人ずつが強力なエネルギーをボールに与え、巡り巡って戻ってきたシュートに、牙山が引き金を引いた。

「風!」
「林!」
「火!」
「山! デストロイヤー!!」

4つの力が合わさった凶悪なシュートに、台風のような風が辺りに吹き荒れる。
けれどそれを待ち受ける円堂は怯むこと無く、ボールに集中しながら拳に闘気を集約させた。構えたポーズは、日本代表としての彼がよく取っていたものに似ている。

「あれは……マジン・ザ・ハンド!?」
「いや、違う……!」

テクニカルエリアで、呟いた青山に三国が首を振る。確かに動作は似ているが、集約されるそのエネルギーはテレビで見たことのあるゴッドハンドよりも明らかに桁違いだ。
拳を振りかぶり、開いた右手から大きな光の掌が展開される。更にそこから、翼のように広がった輝く闘気が円堂に力を与える。

「ゴッドハンド──V!!」

広がったゴッドハンドVの光の中に、風林火山デストロイヤーが吸い込まれていく。気合いの咆哮と共に光の翼がシュートを包み込むと、彼の手には威力を失い煙を上げて止まったボールが収まっていた。
大口を開け、牙山が絶句する。天馬たちも言葉を失い、呆然とボールを見つめる中、円堂はニッ──と雷門に笑いかけた。

「止めたぞ! さあ、反撃だ!!」

大きく弧を描き、投げ込まれたボールに再び時間が動き出す。
力の象徴のようにも思えた円堂のゴッドハンドVは、雷門イレブンを大きく奮い立たせ、活力を与えた。
ボールを奪った牙山が、ドリブルで猛進してくる。円堂たちが守ってくれたゴールを、これ以上攻撃されるわけには行かない。焦りに駆られた霧野が、ひとりディフェンスラインから飛び出していく。

「俺が止める!!」
「霧野!」

突っ走った霧野に、風丸が並走して声を掛けた。

「1人で守ろうと思っては駄目だ。守るにはチームとひとつになるんだ!」
「……! はい!」

風丸の言葉が、霧野の肩から力を抜く。霧野は落ち着きを取り戻すと、信助とのコンビネーションで牙山からボールを奪い、神童へパスを回す。
ボールを受け取った神童には、鬼道が並走してアドバイスを入れた。

「神童。勝負の行方を気にしすぎてはいけない。お前が見るべきはチーム全体の流れだ!」
「チーム全体の流れ……」

神童はボールをキープしつつ、仲間たちを見回す。点を取ることに意識を取られて、忘れそうになっていた。自分がこのチームの司令塔であることを。
チームメイトの位置を素早く確認した神童の元に、ボールを奪おうと火北が突進してくる。

「今の状態で最もベストなルートは──ここだ!」

火北がスライディングを仕掛けてきたその瞬間、神童はバックパスを放った。そのボールの先には信助がアシストに入る、全く予想していなかった動きに火北は絶句する。

「頼むぞ信助!」
「はいッ!」

ボールを受け取った信助は、迫り来るゼロに表情を強張らせる。そんな彼に、壁山が隣へ走り込んで声を掛けた。

「信助くん、固くなっちゃダメッス! みんなの声も、時には敵の声も聞いてベストのプレーをするッス!」
「みんなの声と、敵の声……! はい、分かりました!」

その瞬間、信助はバネのように体を曲げて天高く跳躍した。高い位置からフィールドを見下ろすと、地上を走りながらこちらを見上げる天馬と目が合う。
──天馬なら、着いてこれる!そう確信した信助は、空中から天馬へパスを送り出した。
信助の意図を察しボールをトラップした天馬は、素早くドリブルに移りゼロ陣内深く切り込んでいく。
ゼロのディフェンダーたちは、突進してくる天馬を警戒し守りを固めている。あれをどう突破するか──考える天馬の横へ、吹雪が爽やかな笑みを湛えて並走した。

「風を感じるんだ、天馬くん! 君ならこのフィールドを、誰よりも軽やかに吹き抜けることが出来るよ!」
「──はい!」

天馬は姿勢を低くしながら加速すると、大風谷と木屋の間を風のようにすり抜けて剣城にパスを回す。
ボールを受け取り走り出した剣城の元には、不動が並走した。

「剣城、よく聞け。時としてお互いに頼り、頼られるのが仲間ってやつだ」
「仲間……」

かつて孤高の反逆児とまで呼ばれた不動がこんなことを言っていると知れば、仲間たちは嬉しそうに笑って彼をからかうだろう。
剣城も以前は、仲間など必要ないと思っていた。味方は自分だけで、自分の力で兄を助けるために茨の道を歩いていた。その茨を1番最初に切り開いたのは、誰だっただろうか。

「──まあ、言われなくてもお前は分かってると思うがな」
「そんなことは、」

心を見透かされた気分になって口籠もった剣城に、不動は笑う。
「剣城!」そんな彼らの元に、後方から2人の会話が聞こえたらしい神童が清々しい笑顔を浮かべて走ってきた。

「──キャプテン、ちょっと手を貸してもらいますよ!」
「……ああ!」

一瞬だけニヤリと笑った剣城は不動にも一瞥をくれると、ボールをキープしたまま神童と共に地面を蹴る。
エネルギーを込め蹴り上げられたボールは、闘気に舞い上がり更に高みへ。その反動で上昇した2人は、渾身の力でボールに蹴りを叩き込んだ。

「ジョーカー……!」
「レインズ!!」

闘気が螺旋を描き、強烈なシュートは六塔のグラビティポイントを打ち砕いて、ゼロのゴールをこじ開ける。
これで3対3。雷門イレブンは三度同点へこぎ着けたのだ。観客席からはブーイングが上がったが、天馬たちの表情は明らかだ。
円堂たちは頷き合うと、ポジションから離れテクニカルエリアへ戻って行く。不思議なことに、サイドラインを超えると彼らの姿は青年のものへと戻って行った。

「ここからはお前たちの戦いだ。お前たちは、俺たちの魂を受け継いだ、雷門イレブンなんだ!」
「はいっ!!」

OBたちが開いてくれた活路を、無駄にはしない。天馬たちは大きく、力強く答える。
控えに回っていた選手たちも、幾分かダメージが抜けたのか既にピッチに入る準備を済ませていた。

「見ていたか?」
「はい、バッチリです」
「よし。なら、行ってこい!」

「はい!」大人の姿に戻った鬼道と不動に再び背中を叩かれて、依織は仲間たちの元に駆けだしていく。
元のチームへ戻った雷門イレブンを見下ろしながら、観覧席のイシドはそっと目を細める。その表情は、まるで笑っているかのようだった。