意地悪くて誰にでもつっかかっていく不動くんが、私はどうしても苦手だった。
バカやらアホやらトンマやら、ちょっとでも誰かのミスを目ざとく見つけてはせせら笑いながら言うのだ。勿論私も例外ではなく。
「早くしろよ、バカマネ」
「誰がバカですか」
「お前以外にいないだろ」
心底むかつく。イライラしながら半ば投げつけるみたいにドリンクを渡すと、代わりに「アホ」と返ってきた。そこはありがとうと言うべきだろう、でも不動くんが誰かにお礼を言うところなんて想像できない。というか、あんまりしたくない。
不動くんは私にばかり要求と言う名の命令をする。何故私だけに集中放火するんだ。しかしだからと言って秋ちゃんや後輩である春奈ちゃん、それにまだマネージャーになって日の浅い冬花ちゃんにあの問題児を押し付けることも出来ない。
今日も私ばかりに命令する不動くんに、
「不動くんは私を下僕とでも思ってるわけ?」
そうたっぷり皮肉を込めて文句を言ってやると、不動くんは一瞬目を見開いた後いつもみたいに、にやりと笑う。
「当たり前だろ、バーカ」
その声が何故かいつもより優しく聞こえた気がしたのは、きっと私の幻聴だ。
独占欲を乱射する
title エッベルツ