2日目
緑川くんが私のお迎え係になって2回目の朝を迎えた。緑川くんは昨日と同じように、私の玄関先で仁王立ちしている。
「今日は昨日よりは早かったな」
「頑張ったから」
昨日は緑川くんをずいぶんと待たせてしまったようだったので、私は少しでも睡魔に勝つ確率を上げるために枕元に置く目覚まし時計を増やした。
あんな目覚まし時計の大合唱で目を覚ますなんて初めてだった。
「じゃあ行くぞ、名字」
「うん」
てくてくと2人で通学路を歩く。緑川くんは終始無言だ。それにしても緑川くん、こんなに無口な性格だったっけ。学校ではもっと色んな人と気さくに喋っている印象があるんだけどな。
考えていると、「あ」と緑川くんが口を開く。
どうしたの、と尋ねる前に腕を掴まれて、ぐいっと引き寄せられた。
「み、」
「――お前、自転車に引かれるとこだったぞ」
振り返ると、丁度高校生の乗った自転車が2台続けて私の横をすり抜けて行った。
自転車の高校生は歩道を並んで走り、おしゃべりしながら去っていく。
自転車って歩道は通っちゃいけないんじゃなかったっけ?
「ありがとう緑川くん、もう大丈夫だよ」
「あっ、……ああ」
そう言うと緑川くんはパッと私の手を離した。
何故かちょっとだけ赤い顔をして、緑川くんは髪の毛を指でいじりながら続ける。
「けど、二度あることは三度あるというからな。危ないからもう少し内側に寄っておけよ」
「ん? わかった」
「……って、ち、近い! そんなに寄らなくていいから……!」
「え、そう?」
サッカボール2個分は空けておけ!
と言われたが、普段からスポーツをしない私はサッカボール2個分の距離がどのくらいなのかよく分からなかった。
結局その日の登校中は、緑川くんにサッカボール一個分がどのくらいの距離なのかと、何故かサッカーがどのくらい楽しいスポーツかということを教え込まれた。