本日は土曜日。今日はいつもより日差しのキツい日です。
こんな日は犬の散歩途中のダンディーなおじいさんや、午前の部活帰りの学生さんがお店に立ち寄ります。

いつもより多めに用意された氷を確認していると、カランカランと扉のベルが鳴りました。

「はぁー、暑かった」
「ちっ、汗で化粧が落ちちまったよ」

会話を聞いて一瞬女性のお客様かと思いましたが、振り返ったそこにいたのはすらりと背の高い男の子たち。
しかも、この上ない美形さんです。私は自称面食いの友人を思い出しました。

「すいませーん、アイスコーヒー二つ!」
「あ、あとバニラアイスもひとつね」
「はいっ、かしこまりました!」

私は慌てて思考を引き戻して、冷蔵庫に向かいます。
ひやりと冷たい冷気が頬を撫でて、冷房の利いた店内と相俟って少し肌が粟立ちました。

「はい、名前ちゃん」

真っ白のお皿に丸く盛られたアイス。その上にとろりと掛けられたラズベリーソースに、私の好奇心もそそられます。

(今度、私も食べてみましょう……!)

心の中で決意して、アイスコーヒーとバニラアイスをお盆に、私は彼らの待つテーブルに向かいました。

「お待たせしました、アイスコーヒーとバニラアイスになります」
「どーも」
「あっ、おいしそ〜」

アイスを頼んだのは、綺麗に髪をブロンドに染めた男の子。
サングラスからうっすら見える目をキラキラさせて、スプーンでアイスを掬い取ります。

「……はー、幸せ」
「お前、よくそんな甘そうなもの食えるな」
「これはそこまで甘くないって。ほら食ってみれば分かるよ」
「うわっ、良いよやめろ」

仲良きことは美しきかな、というやつですね。
お店の一角でキャッキャとはしゃぐ二人に、先輩が「女子か」と小声で呟きました。
私はそれに苦笑して、キッチンに引っ込んだ店長の代わりにカップを磨き始めます。

「そういえばさぁ。喜多のやつ、最近変じゃない?」
「あ?ああ……何かとぼんやりすること、増えたよな」

少しだけ静かになったお店に、BGMをバックにしてあの二人の会話が聞こえてきました。
どうやらご友人のことを話しているようです。

「これはもしかすると、アレじゃないかな」
「アレ?」

ずずー、とアイスコーヒーを飲み取ったらしい女の子のような顔立ちの彼が、「すいません、アイスコーヒーおかわりお願いします」と先輩を呼び止めました。

「恋煩いってやつだよ!」
「ぶはぁっ」

苦しそうな噴出音に、私は思わず顔をそちらに向けます。
見ると、コーヒーにむせた彼がゴホゴホとせき込んでいました。

「そりゃ有り得ないだろ!だってお前……あの頭の固い喜多が!?」
「頭固くたって恋愛くらいするでしょ〜。……まぁ確かに想像しにくいけど」

けたけたと笑う二人は、そのまま「ところでさ」と違う話を始めます。
ふむ。何だかよく分かりませんが、そのキタさんという人の恋が実ることを祈りましょう。

その二人の通学鞄に天河原の校章が刺繍されていることには、その時の私は気づきませんでした。