4日目
昨日の出来事のせいか、今日のお迎えは比較的ゆっくりな時間帯だった。
私としてはいつもより15分近くゆっくり出来てバンバンザイ、本当に緑川くんには色々とお礼を言わなければ。散々迷惑かけてるのに、その上こんな気まで使われてしまってはお礼をしない方がバカと言うものだろう。
いつも通り教室に二人で入って、緑川くんは他の友達としゃべりに私の隣を離れる。
席に付きながら私は考えた。緑川くんにどうやってお礼しよう。普通にありがとうっていうのは芸がない気がする。というか、昨日散々言ったからいい加減うっとうしがれてしまうかも、……いや、緑川くんに限ってそれはないか。
(だって緑川くん、良い人だもん)
ちらりと男子が固まってしゃべっている方向に視線をやると、あらびっくり。ばちんと音がしそうなくらい完璧なタイミングで緑川くん本人と目があった。
反射でふにゃりと笑いかけると緑川くんは赤くなって顔を反らしてしまった。抹茶色のポニーテールが揺れる。
(そうだ)
ちょっぴり寂しさを覚えながらも私は思いついた。緑川くんへのお礼を。
うん、よし。1限目が終わったらすぐに売店に行こう。
「……何これ」
「期間限定、抹茶味ポッキーです」
2限目の休み時間、あきれたように私の差し出したポッキーの箱を見る緑川くん。
やっぱりお礼と言えば菓子折りだよね!そう言うと緑川くんは一瞬驚いたように目を見開き、仕方ないといった風に箱を受け取る。
「でも何で抹茶味?」
「ん? ただ単に私が好きな味だからって言うのもあるんだけど」
緑川くんの髪の毛見たらそれしかないと思った。
そう言うと、緑川くんは何だそれ、と少し笑った。
時々思ってたけど、緑川くんはとてもかわいく笑う。男の子にかわいいなんて言ったらいけないかもしれないけど、ほんとにそうなんだから仕方ない。
「私、緑川くんの笑った顔好きだなぁ」
「えっ」
思わず呟いた私を、緑川くんは目を大きく開いて真っ赤な顔をして見た。いやだから、何でそんな乙女チックな表情が出来るんですか。そして何故似合うんですか。
緑川くんはハッとすると、箱を小脇に抱えてぷんと横を向いた。
「な、何急に変なこと言ってるんだよ! 大体そんなこと簡単に言うもんじゃないだろ、恥じらいとか持て!」
「……緑川くん、照れてる?」
いつも以上に饒舌でマシンガンな返答に、私は首を傾げながら続けた。
緑川くんは次の瞬間「な、……ッ!」と言葉に詰まったあと、顔は斜めを向いたまま、目線だけを私に向けてぼそりと言う。
「……照れて悪いか」
私がキョトンとする間に緑川くんは箱の蓋を開けて、ポッキーを親の仇みたいにぼりんぼりん食べていた。
真っ赤な顔のままの緑川くんはやっぱりかわいかった。