私の名前は名字名前。フィフスセクターに勤める平社員だ。
今日は通勤していきなり聖帝に呼び出され、少しハラハラしている。
自分で言うのも何だが、私は仕事が早い方だ。ミスも滅多にしないし、上司から信頼されている自覚もある。
聖帝にお叱りを受ける理由は全く思い付かないのだが。
「…名字」
「! はい」
暗がりから名前を呼ばれ、私は背筋を正す。
ぼんやりと明かりに照らされたそこには、立派な椅子に腰かけた聖帝がいらっしゃった。
「今日は、お前にいくつか質問がある」
「はい、何なりと」
…と、答えたは良いものの何を聞かれるのだろう。流石にスリーサイズなんかに関しては黙秘権を行使したいのだが。
「お前には、妹が一人いるらしいな?」
「…ええ、年の離れたのが、一人」
最初の質問は、完全に予想の斜め上を行くものだった。身構えていた私は思わず反応が遅れ、一拍空けて問いに答える。
「その…それぐらいの年頃の女子は、何を欲しがるものだろうか」
「へ?」
斜め上どころか真横に吹っ飛んだ。
間の抜けた声を返した私に、聖帝は居心地悪そうに咳払いを一つする。
「…聞こえなかったか?」
「あ、いいえ。えー…」
危ない危ない、聖帝の機嫌を損ねるところだった。
私は一言断って、返す言葉を考える。
私と妹の中は至極良好だ。
一緒に買い物にも行くし、妹の恋愛相談に乗ることだってある。
と、ここまで考えたところで気付いた。
「聖帝…妹さんがいらっしゃるんですか?」
「……ああ」
聖帝はややぶっきらぼうにではあったが、しっかり頷く。
ああ、そう言えば時々、フィフス本部に女子高生が来ることがある─なんて話を上司から聞いたことがあった。そうか、それが聖帝の妹さんなのか。
「でしたら、妹さん本人に聞くのが一番良いのでは?難しい年頃ですから、ストレートに聞いて欲しいものをあげたほうが確実に喜ばれるかと」
「…それも、そうだな」
少し考え、聖帝はゆっくり頷く。
その横顔は思慮深い青年のそれだが、頭の中は妹で一杯なのだろう。
「なら、その助言に従うことにしよう。ありがとう、名字」
「いいえ、お役に立てて光栄です」
聖帝はサッと立ち上がると、そのまま奥の部屋へ引っ込んで行った。
しかし、一つの組織を纏めあげる男の本心がただの妹思いの兄だとは、世間とは分からないものである。
そして、その後日から聖帝が度々私を呼びつけては、妹に関する助言を求めることになるなんてことは、この時の私は予想だにしていなかったのだった。
テディベアは卒業しなければ
121005
誕生日前の妹にプレゼントをあげたいイシドさん