私たちは所詮まだ中学生で、ファミレスや喫茶店なんかでオシャレにレポート用紙を広げる勇気なんか持っていない。
「だからってマックはないわー」
「うるせぇ、ぼやく暇あんなら手ェ動かせ」
ノート、単語帳、教科書、参考書、その他色々を雑多にテーブルに広げて、私と向かい合って座る倉間は必死にシャーペンを紙面に走らせていた。
期末テストまであと四日。どうせ勉強するなら、もっと違うところがあっただろうに。
「図書館とかさ…」
「今日は休館日だ、バカ」
ああ、そう言えばそうだったか。
というより、私は何で倉間と一緒に勉強することになったんだっけ。
確か今日の昼休み、倉間が突然、放課後の勉強に誘ってきたのだ。
浜野は何だかニヤニヤして、速水は相変わらずアワアワしていた。
「ていうか倉間、今回やけに力入ってるよね。いつもはもっとテキトーじゃん」
コーラを啜り教科書にラインマーカーを引きながら尋ねると、倉間の手が急に止まる。
視線を手元から倉間の顔に移してみると、どうしたことか倉間は、目をつり上げて真っ赤な顔で私を睨んできていた。
「そ、それは…」
「? それは?」
オウム返しすると、倉間は片方しか見えない目を右往左往させながら手持ち無沙汰にただのゴミと化したハンバーガーの包み紙を握りしめる。
日に焼けた肌に、包み紙に残ったソースがへばりつくのが見えた。
「…っ名字。お前、隣町の私立、受験考えてんだろ…」
「ああ、うん」
「お、俺の今の頭じゃ、少し、偏差値足りねーから」
ごにょごにょ言って、倉間は参考書を手繰り寄せる。
ばらばらと適当に開いたそれは、逆さまだった。
「ああ、なるほど。倉間もあそこ狙ってたんだねぇ。知らなかった」
「…お前ホント鈍いな!」
頭をかきむしって倉間は叫んだが、店内の雑音の中では、それは大した意味を持たない。
なるほど、こういう騒がしい所で勉強するのも、意外と利点があるもんだ。
口に放り込んだポテトは、とっくに冷め切っていた。
素直じゃない
20120228