私の彼氏は学校でサッカー部に入っている雪村と言います。
しかし彼は最近OBの吹雪先輩と特訓するのが目下の楽しみらしく、私と話しているときもその人のことばかりです。
ホント、いつもいつも飽きないのかと呆れるくらい吹雪先輩吹雪先輩、先輩先輩先輩先輩、ゲシュタルト崩壊起こすつもりかこのボケッ!
「なっ、何でいきなり殴るんだよ!?」
「うるさいこの先輩バカ」
目を白黒させながら首を捻るこの雪村という男は、少しも女心というものを理解していないのだ。
例え相手が男だろうが彼女が目の前にいるときにその人の話ばかりされて(というかほぼ9割)楽しい女がいるだろうか。いや、いない。
とまぁこんな風に普段使ったりなんかしない反語なんかも使いこなしちゃうくらい、私はずっとイライラしているのである。
ちなみに私たちが今いる場所は、学校の屋上だ。
今日は日差しが暖かく雪の冷たさも気にならないくらいなのに、私の心が晴れることはなかった。
「─ああ、いたいた」
雪村!と、ふいに屋上の扉が開く。
そこにいたのは何と言うことか、雪村の最愛(というと語弊が生まれる気がする)の先輩、吹雪さんだった。
「あっ、吹雪先輩!」
雪村は途端顔を輝かせ、飼い主を見つけた子犬のように吹雪さんに駆け寄っていく。
ちくしょう、ストレスが溜まりすぎたのか雪村の腰に犬のしっぽが見える。ついでに犬耳も見える。かわいいなんて思ってないぞ!
しかし、吹雪さんはどうやら部活の連絡事項を伝えにきただけらしく、二、三度言葉を交わすと、「じゃあまた放課後」と爽やかに手を振って踵を返す。
そのまま屋上を立ち去るのかと思った、ら。
「もしかして君、雪村の彼女?」
「え」
一瞬こちらを一瞥した吹雪さんは、あろう事か私の方へ歩み寄ってきたのである。どういうことなの。
え、あ、はい、と予想外の出来事に戸惑いつつも答えると、吹雪さんは「そっか」と私に爽やかに笑いかけ、ふと背後の雪村を振り返り、ニヤリと笑った。
あれ、さっきの爽やかスマイルはどこいったこの人。
「君がいつも話してる通り、とってもかわいい彼女さんだね?雪村」
「ちょっ…せ、先輩!」
犬歯を剥き出しにして突っかかる雪村を華麗なステップで交わして、吹雪さんは今度こそ「またね!」と屋上から去っていく。
ていうか、今の話は、どういう。私が振り返ったことに気がついた雪村が、ハッと肩を揺らす。
「あっ、いや…その!別に変なこと言ったわけじゃないぞ!?ただ、こう、先輩にそういうこと聞かれたから正直に話しただけって言うか…!」
「うるさいだまれ大好きだこのバカー!!」
とどのつまりバカップル
20120125