今日の気温は氷点下三度。とどのつまりすごく寒い、冗談じゃないくらい寒い。
だが、それはあくまでも室外の話だ。今こうして家の中で、なおかつ炬燵に潜りながらテレビを観ている私にとっては何の関係もないこと。
だったんだけど。
「名前、蜜柑とって」
「自分でとれバカヒロト」
「うっ、おい風介!お前人の腹蹴ってんじゃねーよ!」
「事故だ」
何で私の楽園(炬燵)はこんなにぎゅうぎゅう詰めなんだ…
さっきまで、私ひとりで悠々と占拠してたはずなのに!何故だ!
さっきから晴也と風介はぎゃんぎゃんうるさいし、ヒロトは勝手にテレビのチャンネルを変えてしまうしで散々だ。
「事故っていうなら今すぐその足を引っ込めろ!」
「嫌だ寒い」
「いてっ!」
炬燵の中で見えない戦いを繰り広げている二人を見て、ヒロトが蜜柑を剥きながらにっこり笑う。
「平和だね」
「そう見えるならヒロト、あんた今すぐどっかで目玉とっかえてきなさい」
こんな今にもアトミックフレアやらノーザンインパクトが飛び交いそうな雰囲気を平和とは言わない。
「まぁ、落ち着きなよ」イライラ指で天板を叩いていた私の口に、ヒロトが生ぬるくなった蜜柑を一房突っ込む。晴也と風介がギョッとしながらこっちを見た。
「何してやがんだヒロトてめー!」
「名前、今すぐ吐き出せ。そして口を消毒しろ」
「二人ともヒドくない?」
ヒロトの両サイドにはねた赤い髪が、しょぼんとへこたれたように見えた瞬間だった。
もぐもぐと蜜柑を咀嚼して飲みこんで、手前に置いてあった緑茶を飲み下す。蜜柑と緑茶の何とまぁ合わないこと。
苦い顔をした私に、風介が心配したのか手にしているアイスを差し出したが、丁重に断った。
「ヒロト、チャンネル変えて。歌番組始まっちゃう」
「えー、まだこれ終わってないのに」
「それよりバラエティー観ようぜ」
そして再び始まるチャンネル争い。
それが終結するのは、騒ぎを聞きつけた瞳子姉さんの鶴の一声がかかる、一時間後のことである。
真冬の日常
110121