「咲山くんのマスクって暖かそうだよね…」
少し目線が上の咲山くんを見上げて言えば、「あ?」と目を細められる。
私は手袋をしていない両手を擦り合わせた。
「やっぱり、外気に晒されてる部分が少ない方が良いよね、この季節は」
「分かってんなら手袋くらいしてくりゃいいだろーが」
「だって片っぽなくしちゃったんだもん」
片方だけ付けててもおかしいだけでしょ!?力んで言うと、「バカか」と軽く一蹴されてしまった(心外だ)。
むくれた私を見下ろした咲山くんが、溜息をマスクに溜め込む。
そして、おもむろに私の手を掴んで自分のポケットの中に突っ込んだ。
「あ、暖かい!」
「カイロ入れてるからな」
「えっ、貸して!」
パッと顔を上げて懇願すると、途端に顔をしかめる咲山くん。
ポケットの中で私の手を握りなおしながら、咲山くんはちょっと耳の辺りを赤くした。
「やだね」
「けち!」
「るっせ」
憎まれ口を叩いても、私の手は咲山くんのポケットの中にあるまま。
見上げた咲山くんの顔がまだ少し赤いことに気がついて、申し訳ないけどちょっと可愛くて笑ってしまった。
「あっ、名前先輩と咲山先輩がイチャついてる!!」
「うるせーぞ、成神」
てのひらに春
110108