今、部室には私と咲山先輩以外誰もいない。何故だろうか。

「おい、粉こぼれてんぞ」
「はっ!!」

手元に掛かったドリンクの粉をどうにかゴミ箱に捨てて、私は先輩に見えないように心臓を抑えて深呼吸した。
落ち着け、落ち着くんだ私!これはきっと神様がくれたチャンスなんだ!
何で咲山先輩がさっきから部室に籠もっているかは知らないけど、みんながスタジアムにいる今しかない。
今日こそ!今日こそ咲山先輩に告白を!!

「さっさささ咲山先輩!」
「あ?」
「ああああの、私、先輩に一つ言いたいことが」

うん良し、有り得ないくらい噛んだけど取りあえずつかみはこれでOKなはずだ!
さぁ行け、行くんだ私!たった二文字に付属品を付けるだけでいいんだ。好きです、すき、すきすきすきすきすきすきよし!

「きすです!!」
「は?」

あっ間違えた!

「ああっ違うきすじゃなくて!す」

ガタンと咲山先輩が立ち上がる。「せ、先輩?」ツカツカと歩み寄りながら先輩は鉄壁のマスクをズリ下げて。

ちゅう、と。

「………!!?」

唇を吸われました。

「何だよ、その顔。キスして欲しかったんじゃねーの?」

初めて直に見る咲山先輩の意地の悪そうな笑顔は永久保存版にしたいくらいカッコ良かったのだけれど、何かマトモな言葉を発する前に私の意識はブラックアウトした。


キャパオーバー