「咲山さーん!」
「んだよ」

敬愛する咲山さんのクラスに遊びに来ました。眉間にギュッと皺を寄せる咲山さんもカッコいいです。

「次の授業は合同総合らしいですよ!隣の席に座っても良いですか!」
「勝手にしろ」

面倒くさそうにふいとそっぽを向く咲山さん。
どうして私がこんなにも咲山さんに執着してるのかと言うと、それは二週間前、私が名も知らぬ先輩方にカツアゲされていたところを、咲山さんに助けてもらったからなのです。夕日の光を背に浴びて「大丈夫か?」と言った咲山さんがとてもかっこよくて、まさにアニキと呼ぶに相応しい人だと思いました。
友達にそれを言うと「その場合、王子様っていう方が普通じゃないの?」なんて笑われたけど良いんです、咲山さんには王子様よりアニキの方が似合います。
その次の日に、菓子折りを持って咲山さんのクラスに突撃。「アニキと呼ばせてもらっても良いでしょうか!?」私のいきなりの発言に、咲山さんは一瞬ポカンとして一言「却下」と放ちました。
そんなわけで、妥協に妥協して名字にさん付けで収まってるわけですハイ。

「ところで咲山さん、新発売のポテチを買ってきたのですがいりますか!」
「……おう」

私の差し出したポテチをポリポリ食べる咲山さんに、思わずによによしてしまう。あれ以来毎日こうしてお菓子を持って遊びに来ているけど、咲山さんが私を追い返そうとしたことは一度もない。どれだけツンツン不良オーラを醸し出していても、本当は咲山さんは優しい人なんだから。

私が男だったら、真っ先に咲山さんの舎弟にしてもらうのに。
いつか咲山さんにそう言った時、咲山さんは苦い顔をしながら私に思い切りデコピンしたあと(ものすごい痛かった)、ポンポンと優しく頭を撫でながら言ったのです。

「お前は今のままで良い」

それじゃあ私が女でも舎弟にしてくれるんですね!?と言ったら一瞬で不機嫌になった咲山さんにグーでおでこを思い切り小突かれたんだけど、耳が真っ赤なのが見えたので満足しました。
咲山さんは優しくて、ただちょっと照れやなだけなのです。

「そんな咲山さんが大好きです!!」
「は!?」

脈絡もなく叫んだ私に、咲山さんが真っ赤になった。
それでも、赤いままの顔でぶっきらぼうに「そうかよ」なんて言うから、私は嬉しくなりました。

ああ、私はなんて幸せ者なんだろう!


とある少女の幸福論