「羨ましかったんだ」

跡形も無くなってしまった私たちの居場所を遠目に眺めながら、ガゼル様は唐突に切り出した。

「どんな理由があろうと。父さんに大切にされて、力を持っていた、あいつが」

お父様は刑務所にいれられたらしい。お父様を利用した、剣崎も。ガゼル様のふわりとした髪が、風に揺れる。

「言っていれば変わっていたのか。グランだけ─ヒロトだけじゃなくて」

私たちのことも、見て欲しいと。
すっ、とガゼル様の目から、涙が一筋零れ落ちた。
私は、ポロポロと止まることをしらないその涙たちを、そっとすくい上げる。

「お前は、どう思う」
「私、は」

まだ、間に合うと思います。
ガゼル様が、少し目を見開いた。

「これで全部が終わってしまったわけではないでしょう?お父様が帰ってきたら、みんなでおかえりって言いましょうよ」

グラン様もバーン様も、私もガゼル様も。瞳子姉さんと一緒に。
みんなで、お父様を一緒に出迎えなきゃ。

「─そうだな」
「ガゼル様、」
「ガゼルじゃない」

風介、だよ。
私にすがりついて、微かに嗚咽を漏らした風介くんの頭を、私はそっと抱きしめた。


きみのベガが眠るころ
タイトル/にやり